一方、マレーシアで顧客対応の仕事をしていたとき、怒鳴ったり嫌味を言ったりするお客さんに出会ったことは記憶にありません。この違いは何かというと、日常で家族とのコミュニケーションに満足している人が多いことと、人種や宗教によって正しさが異なるため「ちゃんとしていること」をそこまで求めないからではないかと思います。
むしろ怒っている顧客は後回しにされたり、避けられたり、無視されたりと、いいことはないのです。中には「あの顧客はいつも怒鳴るので、この業界では誰も仕事を受けたがらない」と言われたこともあります。「これでけは譲れない」が多い人ほど、この罠にハマるのだと思います。
もうひとつが上下関係の影響です。
中学時代に、先輩に挨拶しなかったり、うっかり目が合ったりすると、「生意気だ」「ガンをつけた」とか言われて怒られたり意地悪される。けれど、この先輩たちも、自分より年上の先輩にはやたら腰が低い。こういった上下関係が大人になってもそのまま社会に持ち込まれてしまい、怒りにつながるのかもしれません。
もちろん、イジメはどの社会にもあるのですが、日本社会の特徴は、大人社会も子ども社会と同じように機能していることだと思います。よく考えたら、学校から社会が新卒一括採用のため一直線でつながっているから当然なのです。同じことをしても、自分が高い地位にいれば誰からも、「叱られない」のです。そのためか「怒りを正当化する人」もよく見かけます。
「怒りを正当化する人」は、「叱られて俺も一人前になった」とか、「躾のつもりだった」とか言います。一九八〇年代に死亡事件を起こし、社会問題化した戸塚ヨットスクールのようなスパルタ式の「しごき」をわざわざお金を払って子どもに受けさせる親もいます。
叱られた方も、「育ててもらった」「怒られたから今の自分がある」と自分を正当化します。私も少しその気かあるように思います。
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