「別の疾患にもアプローチしていきたい」
nodocaは20222年4月に「新医療機器」として、所管の独立行政法人・医療品医療機器総合機構(PMDA)の審査を経て製造販売の承認を取得。新医療機器とは、「既存の医療機器と構造、使用方法、効果または性能が明らかに異なる医療機器」のことだ。
従来のインフルエンザ検査は、粘膜を拭って「そこに病気の原因のウイルスがいるか」どうかを判定するものだった。ハードウェアで撮影した画像と問診情報等に「インフルエンザに特徴的な症状や所見が発生しているか」どうかを判定するnodocaとは、考え方が根本的に異なる。
それゆえに、承認を得るまでは困難も多かったという。田中氏は「nodocaの有効性をどのように検証するか、というところからPDMAと一緒に作り始めるようなものだった」と振り返る。
だからこそ、創業から5年という、スタートアップにしては長期にわたる時間を要した。しかし、医療機器開発は10年から20年以上かかると言われることもあり、実は5年での承認取得は驚異的なスピードだという。承認に漕ぎつけたのは、「(アイリスの)人材の力があったから」だと田中氏はいう。
医師でありながら医療ベンチャー経営の経験がある沖山氏、厚労省出向の経験がある加藤氏以外にも、経済産業省や医療機器メーカー出身者など、そのメンバーは幅広い。その結果、同社が確認する限り日本で初めて、AIを搭載した新医療機器が誕生した。
現在、多数の医療機関から引き合いがあるというnodoca。nodocaのインフルエンザ検査は2022年12月より保険適用されており、保険点数(診療報酬)は既存のインフルエンザ検査と同等。つまり、医療機関にとっても患者にとっても、金銭的な影響は同じだ。
だとするなら、今後はより痛みが少ないnodocaが使われるシーンも増えていくであろうことは、想像に難くない。
「まずはnodocaをしっかりと世の中に広めていくことが重要。、同時に、インフルエンザ以外疾患も適応拡大を見据えて、現在研究開発を進めているところです。」(田中氏)
インフルエンザという、誰にとっても身近な病気。その新しい検査方法から覗くことができるのは、私たち人類の未来なのかもしれない。
聞き手・構成/朽木誠一郎
文/毛内達大