テレビの「文法」からはみ出すものが生まれてきている
金平 そういえば最近、僕が注目している番組があってね。TBSの若手が始めた『不夜城はなぜ回る』というの。ご存じですか?
河野 いえ、知らないです。
金平 『不夜城はなぜ回る』は、若い5年目ぐらいのディレクターが考えてつくっている。深夜12時過ぎとか2時、3時に煌々と明かりがついているところに突然訪ねていくんです。アポなしで「何やってるんですか?」と聞き歩く番組なんだけど。これは、面白い。
河野 へぇー。
金平 押しつけがましさはなく、淡々と自分でカメラ回して話を聞くんですよ。
河野 それは報道でつくっているんですか?
金平 いや、制作局。彼は報道に1年いて「お前は向いてないんじゃないの」って言われたとか。そういう若者がつくっているのが面白いです。それから、1967年につくられたTBSの『あなたは……』ってあったでしょう。
河野 はい。制作者の勉強会で観たことがあります。
金平 街頭で「あなたは……」とインタビューするだけのドキュメンタリー。67年に寺山修司と萩元晴彦、村木良彦がつくった。それを2022年にもう一回つくり出したんですよ。『日の丸 それは今なのかもしれない』というのが映画にもなりましたけど。街録(街頭録音)だけで、よくこれだけのものをつくるなと思うくらい、本当に面白い。
河野 へぇー、面白そうですね。街録はある意味、取材の基本ですよね。
金平 いま30歳前後の彼らが「ドキュメンタリーとはこういうものでございます」というのをぶっ壊していこうとしている。僕はテレビの文法からハミだすものが出てきたということに可能性を感じています。
聞き手・構成/朝山実 撮影/野﨑慧嗣(金平氏) 定久圭吾(河野氏)