口裂け女、カシマさん…「赤い女」の系譜から見えるものとは?――時を重ねてアップデートされる恐怖
怪談や都市伝説に登場してきたカシマさんや口裂け女、窓から首ヒョコヒョコ女、アクロバティックサラサラなどを「赤い女」とくくり、その共通点と変化の系譜を辿った吉田悠軌『現代怪談考』(晶文社)。 1.赤い服か白い服を着た 2.長身または異常な大きさ 3.カラダに傷をもつ 4.存在を語るか名前を出すと出現 5.子どもを傷つけるかさらっていく ――こうした特徴を持つ「赤い女」に日本人は何を投影してきたのか。「赤い女」の語られ方はどう変わってきたのか――吉田氏に訊いた。
子どもと女性の変化がこれからの「赤い女」を変える?
――デバイスや使われるアプリが変わり、少子化、女性の社会進出が進むなど世相が変わると、またこれからも「赤い女」の細部は変わっていきそうですね。
吉田 たとえば江戸時代には、殺された赤ん坊が化けて出るのはスタンダードな怪談ではありませんでした。飢饉や貧困などの時代背景もあり、子どもの命の重みが今と明らかに違いますから、当時は恐怖の対象になりづらかった。ところが現代においては殺された赤ん坊、虐待された子どもが出てくる怪談が根強くあります。統計的に虐待死の絶対数が増えているわけではありませんが、虐待死への意識の高まり、「許せない」という気持ちは強まっていますからね。そうした意識の産物なのでしょうか。
今後のことは当然まだわからないですが、こういうことがどんな恐怖が生み出されるか、言いかえれば「どんなものが人々にとって恐怖になるか」につながってくるかもしれません。
取材・文 飯田一史
発売日 : 2022/1/27
価格 : ¥2,090
出版社 : 晶文社
単行本(ソフトカバー) : 352ページ
ISBN:4794972881(ISBN-10)
978-4794972880(ISBN-13)
姑獲鳥、カシマ、口裂け女、テケテケ、八尺様、今田勇子――
そのとき、赤い女が現れる。
怪談から読み解く現代史。恐怖の向こう側にあるものとは。