性被害に遭っても必ず味方はいます
――その結果、判決では加害者について「原告に対して同性間の性的行為、キス、フェラチオの行為を求めるようになった」、また栗栖さんについても「原告の性的嗜好は異性愛」、「高校進学後、PTSD、ストレス障害または適応障害などに似た精神の病的症状を呈するようになった」との認定が下されました。
判決には満足しています。しかも判決文の最後には「スクールセクハラ行為は原告が人生でさまざまな幸福を経験する機会を奪い、人生を破壊した」という一文もありました。ここまで私の性被害を裁判所が認定してくれたのかとびっくりしました。
――長い戦いでしたね。
自殺を何度も考えました。でも、死なずに今日まで生きてきて本当によかったと思っています。
――男性被害者の告発は、女性よりもつらい部分があるとも言われますが。
当時は被害を訴えると、周囲にゲイと思われるんじゃないかと怖かったですね。あと、『男だったらはっきり自分で言え』」とか、『男が涙を流すなんてけしからん』みたいな風潮は今も根強い。そういう世間の空気にもずっと悩んできました。
――今後の予定は?
今、社労士の資格取得にチャレンジしています。労務関係のセクハラ、パワハラをなくしたい。あとは情報発信。性被害を誰にも言えずに悩んでいる人にアプローチし、役に立てないかと思っています。
――最後に、栗栖さんのように長年、性被害に苦しんでいる人たちにメッセージをお願いします。
性被害にあって悩んでいると、自分が無価値な人間に思えてしまいがちです。でも、自分を否定せずに大切にしてほしい。悪いのは加害者であって被害者じゃない。きっとだれかが味方になって支えてくれます。
私も塾講師時代の同僚に支えられました。その同僚に性被害を受けた過去があると明かすと、『その先生、時効だろうが何だろうが、ぜったいに許せない』といっしょに泣いてくれたんです。
その言葉が本当にうれしく、支えになったからこそ、今日までがんばれることができました。性被害にあっているあなたはけっして独りじゃない。いっしょにがんばりましょう!
監修/長江美代子(公認心理士)
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