次回作は「インフルエンサー」がテーマ!?

――初期作品では、ネット文化を取り上げた『リセット』や『ダズハント』、社会の歪みが生み出したネットテロリストが暗躍する『予告犯』を描かれています。

ネットは四六時中見ている身近なものなので、それを切り離して話を考えたことはないです。ただ、『ダズハント』や『予告犯』の頃は珍しがってもらえましたけど、今は物心ついた時からネットがあるのが自然な世代が読者の中心だと思うので、それはもう売りにはならないでしょうね。
作風もあって、「ネットをよく思っているか、思っていないのか」についてよく聞かれるのですが、それも良し悪しで語る必要はないのかなと思っていて。いつも「いい面もあれば悪い面もあるので」と、ありきたりな答えになってしまうんです。

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『リセット』。ネットゲームの恐怖を描いたサイバー・ホラー
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――そうですよね。誰がどう使うかによって、ですよね。

作り手としては、ネットの声をあまり聞きすぎてもいけないと思っています。『ニーティング・ライフ』でいえば、この状況下でコロナの話なんか聞きたくないって人もいるでしょうし、それを表明する人もいる。とはいえこちらも、全ての声を「はい、わかりました」と聞くわけにはいかないので、ちょっと冷たい言い方になってしまいますけど、無視することも時には必要なのかなと。

――全ておもねる必要はないですよね。エゴサーチはされる方ですか?

しなくなりました。僕はラストを決めてから描き始めるので、あまり惑わされないようにと思いまして。

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『予告犯』。シンブンシと名乗るテロリストは次第に世間の声を味方につけ…

――7年前の筒井さんのインタビュー記事を読むと、「これからは横の監視が強くなる時代になる」というようなことをおっしゃっていて、SNSなどを見ていると実際にそうなったなと感じます。いまのネット社会を見て思うことはありますか?

インフルエンサーと言われている影響力のある人たちが、ひとたび「こいつを叩け」と言えば総叩き、みたいな状況はちょっと気になりますし、恐ろしいです。次回作はそんなテーマでいこうかなと。まだ、全然白紙の状態ですが。