なぜレシートには「消費税」と記載されているのか?
とはいえ、いきなり「消費者は消費税を支払っていない」と言われても信じられない方が多いと思われるので、これ以降は予想される疑問・反論にQ&A形式で答えていきたい。
Q.なぜレシートには金額の内訳に「消費税」と記載されているのか?
総務省が表示を義務付けているから。ただ、それだけだ。そして、これによって買い物の度に消費者は消費税が記載されたレシートを受け取ることになり、「自分は消費税を支払っている」と錯覚する最大の原因にもなっている。
また、「消費者は消費税を支払っている」という誤解が広まった現状においては、事業者としても消費税を記載した方が価格の妥当性を消費者に納得してもらいやすい面もあるからだろう。
例えば、昼休みに訪れた定食屋の会計が1080円だったら「ランチで千円超えは高いな。次は別の店にしよう」と考えるかもしれないが、受け取ったレシートに「A定食 982円 + 消費税98円」と書かれていれば、「料理自体は1000円以下だったならば妥当かな」と捉えてリピーターになるかもしれない。
だが、実際のところ定食屋と来店客の取引において消費税という概念は存在せず、「A定食は1080円」という事実があるだけなのだ。
Q.「消費税は預り金」という税務署のポスターを見た覚えがあるけど、あれは嘘だったの?
これに関してはその通り、嘘と言わざるを得ない。正確に説明すると、そのような誤解を招くように仕向けたポスターを国税庁(税務署)は1990年代以降につくり続けた。具体例を3つ紹介すると、
「ちゃんと消費税も払っているのに、それを預かる人のなかにきちんと税務署に納めない人がいるなんて、ぜったい許せないじゃん」 滞納しない、正しい納税
出典:室井滋さんを起用した税務署ポスターのキャッチコピー
「消費税は預り金ではない」という判決がある上、国が「免税事業者が消費税相当額の一部が手元に残ることになったとしても税額の一部を横取りすることにはならい」と裁判で主張していたにもかかわらず、事業者を「預かる人」と表現して、事業者による消費税の横取りを印象付ける文言が並んでいる。
「オレが払った消費税、あれっていわば預り金なんだぜ」 マナーだよ全員納税
出典:いかりや長介さんを起用した税務署ポスターのキャッチコピー
「預かり金ではない」という判決を意識したのか、今度は「いわば預り金」という苦しい表現。しかし、本当に預り金ならば「いわば預り金」などという言葉にするはずがないので、「預り金」とハッキリ言い切れないことを税務署が改めて認めたとも言える。
「とめないで! 私の払った消費税」
出典:宮地真緒さんを起用した税務署ポスターのキャッチコピー
「預かり金」で攻めるのは厳しいと判断したのか、今度は事業者が消費税を「止めている(=横取りしている)」という誤解を与えるポスターも出てきた。これらのポスターで国税庁は、裁判の判例もあるため「預り金」や「横取り」とはハッキリ書けないものの、それを連想させる言葉によって国民の誤解を狙ったのではないか。