明石駅にホームドアがついた理由
――社会をよりよく変えていくための、議員のトリセツ(取扱い説明)を教えてください。
お勧めは議員に議会で質問してもらうことです。変えたいことを「議会の質問項目に入れてください」とお願いするんです。次にその議員さんに変えたい内容を条例にしましょうと議会で提案してもらい、行政に働きかけてゆく。選挙の時に公約に入れてもらうことも有用でしょう。地域でシンポジウムを開いてもいいですね。
そうして条例ができれば、社会を変えられます。私が市民といっしょにライフワークとして取り組んでいる犯罪被害者条例も同じやり方で、いまでは41自治体が条例を作るまでになりました。
もうひとつは「請願」です。A4の紙1枚に請願を書いて議会に出す。例えば明石では障がい者の方が駅のホームから落ちて亡くなるという悲しい事故を受け、視覚障がい者の方々が駅にホームドアをつけてほしいと市長室に訪ねてきたことがありました。
そのとき私は「請願なさったらどうですか。例えば身近な明石市議会に」とアドバイスしました。それで請願を出されたところ、明石の市議会もこの問題を真剣に考え出して、請願が可決されたんです。
請願の内容は「明石駅にホームドアをつけるように国に働きかけてください」というものだったので、では議会と一緒に国へ行こうとなって、私と議長と商工会議所の会頭と障がい者団体とで一緒に国土交通省やJR西日本の本社に請願を持って行ったんですよ。
そうしたらホームドアがつくことになりました。請願がなかったら、明石駅のホームドアはたぶん今もついていないと思います。やっぱり議員さんも市民の声は大事にしますから。請願というのは非常にわかりやすい声なんですよね。
――市長は今後、これからどんな社会を作っていきたいですか?
私は貧しい家庭に生まれ育ちました。障がいのある弟の処遇をめぐって理不尽な思いをしたこともありました。だからこそ、冷たい仕打ちをする社会を少しでもやさしい社会にしたいという一心で政治家になったんです。その思いは今も変わっていません。市長辞任後も社会の一員として、明石市をよくする役割を果たしたいですね。
泉房穂市長×たかまつなな 対談動画はこちら