信じられない飛距離の大ホームランを打つために(佐久間)
佐久間 本当にやってみないとわからない。僕もYouTubeをやってみてはじめて、YouTubeってこんなに修羅の世界なんだとわかったし。どういう例え方をしたらいいかわからないけど、マインドが荒れているというか、そういうものが好まれますよね。「ブレイキングダウン」が人気なのは納得だなって。なので、口喧嘩は観られるだろうなと思って、口喧嘩企画をやったらやっぱり100万再生を超えるんですよ。
林 ちょっと過剰なもののほうが人気ありますよね。
佐久間 「ブレイキングダウン」は、要はガチンコじゃないですか。だから、今のコンプラでできないものをYouTubeに求めれば当たるのかなって。だけど、どんどん修羅になっているなと思いますね。
――ある程度の予測はできても、確実にこれがヒットするというのはなかなかわからないんですね。
佐久間 ヒットメーカーと言われている秋元(康)さんとか川村(元気)さんを見ていても、自分の中にある手札の中で、全力で振れるものは時代に関係なく振っていって、当たったらホームランだった、みたいなことじゃないと大ホームランを生んでない感じがします。要は時代に合わせてスイングしちゃうと、ツーベースがいいところなんだと思います。
林 お二人とも手数が多いですよね。どれだけの打合せを重ねているんだろうと思っちゃいますね。
佐久間 そう。あそこまでの手数をやれるのは、実績があるからだろうけど、でも手数が多い人たちは、特に秋元さんを見ていると、スイングが鈍くなるくらいなら三振でもいいというつもりで振っている気がしますね。だから、当たったときにとんでもないものが生まれる。決して時流を見て、当てにいくようなことはしてないと思います。
林 自分の得意分野に引きずり込んでいる感じもしますよね。
佐久間 そうそう。それをしているから、本当に信じられない飛距離の大ホームランを打てるんだと思います。自分の得意分野という話で言うと、お笑いの場合はやっぱり松本(人志)さんがヒットメーカーになってくるんですけど、松本さんの場合、本人が天才で面白いうえに、自分でルールをつくっちゃっているじゃないですか。だって、大喜利の『IPPONグランプリ』もトークの『すべらない話』も、すべて松本さんがルールをつくってますよね。
これはオードリーの若林くんが言ってたんですけど、天下を取る人って自分の教科書を世間に押しつけられる強さがある人なんですよ。じゃないと、天下は取れない。他人のルールで戦っているかぎりは覇権を取れないんですよね。
林 マンガの場合は、なかなかひとつの教科書というものはつくれないですね。幸い僕はいろいろな作家さんといろいろなトライができるので、今の時流とかけ離れたところにボールを投げることもできるし、時流をとらえてそのちょっと先にボールを投げてみることもできる。
死屍累々のジャンルですけど、『鬼滅』と『呪術』と『チェンソーマン』を徹底的に分析して、新たにバトル物を定義し直いたいという作家さんがいればトライできるし、もしかしたらそこからヒット作が生まれるかもしれない。だから、ホラー物だったらどうなるとか、ラブコメディーだったらどうなるとか、ジャンルによってバラバラですね。