大切なのはプランを実行する親の覚悟
働けない中高年の子どもの将来を考えるにあたって、一番大切なのは、資産ではなく親の覚悟です。
ご相談を受けた中で、古い持ち家に住む、子ども3人がひきこもりのシングルマザーの人がいました。
生活保護を受ける案件かもしれないと思いましたので、自治体に相談することをアドバイスしましたが、今ある資産で子どもたちと生きていくプランを立てたいとその方が強く希望されました。実際のご相談では、さまざまな問題やお金の詳細を洗いざらいお話してくださり、私のほうからいくつかプランをご提案しました。
その方は、今の状況だと、「自分が死んだら子どもたちが死ぬことしか考えられなくなってしまう」という危機感をお持ちで、現状を何とかしなくてはいけない覚悟が強く、その日帰ってすぐ、お子さんを集めてプランについて話し合ったそうです。
プランの中に家を建て替えるというのがあったのですが、家族全員がそのプランを自ら選び、それを叶えるために、ひきこもりだったのに住宅展示場に出かけることができるようになったり、ネットで仕事ができるようになったりなど、お子さんたちがどんどん変わっていきました。
今はとても穏やかに親子仲良く暮らしていらっしゃいます。
親が覚悟して、このままだとダメで早く動いたことで、「生きるプラン」になったことは本当によかったと感じています。
反対に、親が覚悟を決めないことで、ずるずると苦しい生活スタイルが続くご家庭があります。
80代の母親と90代の父親で認知症、60代のひきこもりの息子さんのご家庭のご相談がありました。
80代のお母さんはお父さんの介護に疲れ、息子からの暴力にも悩んでいらっしゃいました。
資産は十分あり、お子さんにも残せるし、ご夫婦が介護施設に移ることも可能でしたので、そういったプランや施設への住み替えの準備を進めていたのですが、お母さんがやはり息子を一人にできないと言われて、結局今も精神的に苦しい生活をされているようです。
子どものひきこもりの状態が長引くほど、親も高齢化していきます。
早めに長期的な設計を立てて、覚悟をもってプランを実行していただくことが大切です。
取材/百田なつき