組長の息子がその道に進む「暴力の連鎖」

篤史は不良の道に進み、その特権を利用するようになる。自ら不良グループを結成して、暴走族の集会に出入りした。「どこでも特別待遇を受けることができた」と彼はいう。

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「あの頃の俺は、怖いもの知らずで相当調子にのっていたな。未成年の頃の先輩って怖い存在だろ。でも、その先輩たちが暴走族を卒業すると、親父の組に入って部屋住み生活をスタートさせる。
部屋住みって奴隷同然で、俺の家の便所掃除から使い走りまで何でもやる。俺のようなガキにも絶対服従だった。恐ろしい先輩が、たった1日で家の雑用係になっちゃうわけだから、怖いものなんて何もなくなるよな」

地域の人はみな彼が大幹部の息子だと知っており、そういう目で見てくる。ならば、それに抗ってまっとうに生きるより、同じように道を外れた方が得策だと考えたのだ。

暴力団2世の男の場合、親の威光を利用して不良の道に進む者も少なくない。父親に命じられて構成員たちが働く会社の管理職になったり、右翼の道に進んだりすることもある。中には、二代目として父親の組を継ぐ者もいる。これなどは、暴力の連鎖と呼べるだろう。

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大幹部の息子として生まれ育った子供
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では、子供たちは、暴力団の呪縛から逃れることはできるのだろうか。それは決して簡単なことではない。

神奈川県で指定暴力団I会の構成員を父親に持つ上村ひかり(仮名、以下同)は、母親が覚せい剤中毒だった。そのため、母親は離婚した後も次から次に密売人と付き合ったせいで、暴力団との関係を断ち切ることができなかった。ひかりは、身体は女でも心は男というトランスジェンダーだった。なのに、母親の愛人から性的に襲われることも度々あったという。