LGBTQやジェンダーの問題だけに
あてはまることではない子どもの発言

じつはAさんの対応は、LGBTQやジェンダーの問題にだけあてはまることではない。例えば、障害のある子どもや外国にルーツをもつ子どもも、まわりの子どもから「なんでそうしてるの?」「変な子」と言われることがある。その時に大人がするべき対応は、ほとんど同じなのだ。

ただ、今までは保育現場でLGBTQやジェンダーの課題について、正確な知識を得る機会が充分になかった。研修やLGBTQコミュニティに接する機会をぜひ持ってほしいとAさんはいう。「オンラインでの交流の場を設けているグループもあるので気軽に参加してほしい」と。

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Aさんの同僚の保育士は、Aさんのカミングアウトのあと、「男の子」「女の子」という呼びかけを少し変えるようになった。

これまでは折り紙など「女の子のもの」と思われがちなものについては、保育士の呼びかけが「女の子の中でできる子はいる?」だったのが、「これをできる人はいるかな?」と性別を特定せずに子どもに声かけするようになった。

同僚保育士が子どもに呼びかけをしたとき、男の子が手をあげようとして、すぐに下ろしてしまった姿をみて、保育士自身が言い方を変えたそうだ。Aさんの存在が変化をもたらしていると思う。

保育の中でLGBQTやジェンダーの問題を扱うことは、「マイノリティへの特別扱い」をするのではなく、「どんな子どもも生きやすい世の中」にしていく取り組みにつながる。

LGBTQだけでなく、障害をもつ保育士や外国ルーツの保育士が、それぞれの特性を理解されながら活躍できるようになるとき、子どもたちの多様性は、きっと今以上に認められることになるだろう。

取材・文/大川えみる
集英社オンライン編集部ニュース班