なぜかまったく起こらない渦潮。
展望室のガイドさんの説明に愕然

ワクワクしながら海を見つめていたのに、待てど暮らせど渦らしきものは発生しない。
海面は確かに複雑な潮の動きをしていて、そちこちで泡立ったり、小波が折り重なったりしているのだけど、一向に渦巻く気配がないのだ。

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渦潮は起こりそうで起こらない

これはどういうことかと首を傾げていたら、展望室に常駐しているらしいガイドのおばちゃんが、観光客たちに向かって大きな声で解説をはじめた。
「ごめんなさいねえ。今日の渦潮はイッチバン小さい渦潮。『小潮(こしお)』なので、月でイッチバン渦を巻きにくい日なんですよお」

げ。そういうこと?

ガイドさんとしての立場上なのか、「渦潮」と言い張っているけど、どこにも渦なんて巻いてないし。

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ガラス張りの床で、渦潮を真上から観察できる(こともある)展望室

太陽と月と地球の位置関係によって地球の海の水に偏りが生じるため、ひと月の間でもっとも潮の干満差が大きくなる日が「大潮」。
逆にもっとも潮の干満差が小さくなる日が「小潮」である。

よりによって今日はその「小潮」。渦潮が発生しにくい条件の日なのだ。
実は“渦の道”への入場券を買う前に、僕はネット情報でその件を把握していた。
だけど、少しくらいは渦を巻くのではなかろうかと鷹をくくっていたのである。

だって、あの超有名な鳴門の渦潮だもの。
今日しか来られない遠方からの客だっているんだから、そのくらいのサービスはするでしょうよ、と。

しかし自然は甘くなかった。
そんな一見さんの勝手な期待に応える筋合いはないとばかりにマイペースを崩さず、今日は巻きませんよと頑なだ。

まあ……、仕方ありませんな。
またいつか来よう……。

と独りごちて、僕はうなだれつつ鳴門をあとにした。