Siriの「ありがたさ」と「物足りなさ」

現在、高尾さんは自宅でリハビリ生活を続けている。車椅子で出かけることもあるが、生活のほとんどはベッドの上だ。主にiPadを使って日々の情報収集を行っているが、まだ自由にタッチ操作をすることができない。しかしiPadは、指でタッチができなくても、操作するための方法が複数用意されている。

1つは、Appleの音声アシスタント「Siri」による操作だ。iPadやiPhoneに搭載されているSiriを使えば、声でさまざまな用件をリクエストできる。

「たとえば、『Hey Siri、○○さんに電話をかけて』と声をかければ電話を発信できますし、『メールを読んで』と言えば、新着メールの件名を読み上げてくれます。さらにこの場合、Siriが件名を読み上げたあとに『それを読んで』とリクエストすれば、本文も読んでくれるんですよ」(高尾さん)

「命の次にiPadが大事」…10万人に1人の難病「ギラン・バレー症候群」と闘い続ける医師が健常者にも届けたいアクセシビリティ機能のこと_3
Siriを使えば、メッセージを送ったり、電話をかけたり、メールをチェックしたりと、iPadのさまざまな操作を声で行えるようになる
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音声アシスタントは、スマートスピーカーからでも利用できる。高尾さんが気に入っているのはGoogleのカメラ搭載スマートディスプレイ「Google Nest Hub Max」(写真:高尾洋之)

しかし、Siriだけではうまくいかないこともあるそうだ。

先ほどのメールの例では、本文が長いと途中で読み上げが止まってしまう。また、電話に関しては、自分から通話を終了することができなかった。2022年9月リリースの「iOS 16(iPadOS 16)」以降は「Hey Siri、電話を切って」と言えば反応するようになったが、それ以前は不可能だった。自分の声が、電話先の相手に向かって話しているのか、Siriに対するリクエストなのかを判断できなかったからだ。

「これまで電話をしたときは、相手に切ってもらうよう頼んでいました。ただ、相手が電話に出ることなく留守番電話になったときが大変で。こちらから切れないので、時間切れになるのを待つことしかできなかったんです」と、高尾さんは以前を振り返った。

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iPhoneやiPad、スマートデバイスを活用すると、家電も声で操作できるようになる(写真:高尾洋之)