沖縄県知事選、ひろゆきの辺野古訪問、裁判勝訴…怒涛の4カ月
9月11日 沖縄県知事選挙で辺野古新基地建設反対を掲げるオール沖縄陣営、玉城デニー候補がゼロ打ち当選。旧統一教会との深い関係が取り沙汰された自民系候補は落選。「玉城氏が知事になると沖縄に中国が攻めてくる」というデマが選挙当日まで飛び交う前代未聞の選挙だった。
9月16日 重要土地規制法運用が閣議決定。
9月20日 同法が施行。沖縄県内の住民の多くが監視、検閲の対象になる懸念があり、辺野古など基地反対運動のテントの撤去や自衛隊配備が進む島嶼部での住民の規制強化が不安視される。
9月27日 安倍晋三元首相の国葬が催される。玉城デニー沖縄県知事は欠席。沖縄県内からは沖縄市の桑江朝千夫市長、座間味村の宮里哲村長、そして与那国町の糸数健一町長が出席。このうち直接、招待状が届いたのはなぜか与那国町長のみだった。
10月3日 2ちゃんねるの創設者として知られる西村ひろゆき氏が辺野古のゲート前を訪問。座り込み抗議の看板の日付を「0日にした方がよくないですか?」などと独自の見解で揶揄し話題になる。翌日、再び辺野古のゲート前を訪れたひろゆき氏にインタビューしたが、まったく座り込み抗議の本質とズレた指摘を続ける姿に私は呆れた。そこから、ひろゆき氏は連日に渡り、沖縄の基地反対運動に関するデマを含む情報をSNSに投稿。辺野古の抗議運動に関する異常なバッシングが再燃する。
これ以降、高須クリニックの院長や県外の地方議員などが、抗議者のいないタイミングで辺野古のテントに訪れる事案が多発し、11月16日にはマッチと共に「脅迫文」のようなものが発見されたり、今年1月14日、1月29日には件の看板の日数が「1日」に戻される事案も続く。辺野古の座り込みに対する攻撃はネットを飛び越えて現実に始まっている。ひろゆき氏が訪れてから、この場所は標的にされてしまった。
ひろゆき氏の言動との直接の関係は不明だが、防衛省は2021年より、防衛費の大幅増額を目指し、ネットなどのインフルエンサー100人との接触を計画していることが明らかになり、省内からも疑問の声が上がっていた。この100人が誰なのかはいまだに明らかになっていない。
また、2022年12月9日には 防衛省が人工知能技術を使い、SNSで国内世論を誘導する工作の研究に着手したことを共同通信がスクープした。記事によると、
【インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている。】
このニュースには驚愕した。もはや、戦争へと突き進む世論誘導を防衛省は隠さなくなったのだ。
11月3日 イーロン・マスク氏のツイッター社買収によってTwitterのアルゴリズムが変化しユーザーに混乱が生じる。ドナルド・トランプ前大統領のアカウントも凍結が解除された。
11月9日 米国中間選挙。
11月10日 キーンソード日米共同訓練。奄美大島、徳之島、沖縄島、与那国島で米軍約1万人と自衛隊約2万6千人が共同演習開始。
同日 沖縄島八重瀬町の訓練を撮影していた記者が自衛官2名に撮影を制止され、データの削除を求められる(法的根拠なし)。
11月11日 米軍が座間味島の米提供区域外で訓練の準備をしていることが発覚。座間味村の中止要請を受け計画変更。
11月16日 辺野古ゲート前の座り込みテントで「1ヶ月以内にテントを撤去しなければ、我々で強制的に撤去する」という差出人不明の手紙とマッチ箱が発見される。これらは警察に提出された。
同日 与那国島で自衛隊と米軍が初の合同演習。民間空港に降り立った戦闘車両が初めて公道を走る。また2015年の自衛隊配備に関する住民投票の際は説明されていなかった、米海兵隊による自衛隊との合同訓練も実施された。
11月17日 日中首脳会談 岸田首相と習近平主席がタイで会談。「建設的かつ安定的な関係」の構築に向け、首脳レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行うことで一致したと外務省が発表する。日中防衛当局者間の「ホットライン」を2023年春をめどに設置することで一致し、自衛隊幹部もこの予定について歓迎を示した。
11月30日 与那国島ミサイルの着弾を想定した避難訓練。
12月8日 私、大袈裟太郎こと猪股東吾が産経新聞との名誉毀損訴訟で勝訴。この際、産経新聞側が、幸福の科学の関連団体が作成した動画を証拠として提出(なぜこの動画が重要かは後述)。
12月16日 政府は安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」についての安保関連3文書改定を閣議決定。これにより敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が可能になるなど、専守防衛を基本としてきた戦後防衛政策の大転換となる。
また、防衛予算は現在のGDP比率1%から2%へと倍増が予定され、防衛費は年間約11兆円。米中両国に次ぐ世界3番目の軍事予算となる。
12月20日 石垣市議会が今年3月に完成する自衛隊石垣駐屯地への長射程のミサイル、いわゆる敵基地攻撃能力を持つミサイルの配備を「容認しない」とする意見書を野党、中立の賛成多数で可決。
12月22日 政府は原発の60年超運転や次世代型原発への建て替えを柱とする基本方針を決定。東日本大震災時の原発事故以降の方針の大転換なり、原発への攻撃リスクを考えると、防衛費倍増との矛盾を感じるものだった。
12月29日 黒柳徹子氏のテレビ番組「徹子の部屋」に出演したタレントのタモリ氏が「来年はどんな年になるか?」との質問に「新しい戦前になるんじゃないですか」と答え、ネット上で物議を醸す。
2023年1月4日 与那国町長は島民避難のためのシェルター設置を政府に対し申し入れる予定を発表。
同日 玉城デニー沖縄県知事は、自治体外交による東アジア情勢の緊張緩和、並びに経済の活性化を視野に入れ、県庁内に地域外交室を設置することを発表。4月から運用が予定される。
1月10日 米軍が沖縄に「離島即応部隊」いわゆる海兵沿岸連隊(MLR)を創設する方針を日本政府に通達したことが明るみになる。
1月12日 鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地着工。この基地は米軍も一部を共同使用する見込み。建設反対を掲げ当選した西之表市・八板市長は賛否を明言していないものの、すでに米軍再編交付金の受け取りを決定。反対する市民から反発が強まる。
1月11日 日英首脳会談。「日英円滑化協定」に署名。日英共同訓練の手続きを簡素化。「100年前の日英同盟以来の重み」と政府関係者が証言。
1月13日 日米首脳会談。岸田・バイデン政権下に防衛費倍増が決定されたが、この計画自体は2018年、安倍・トランプ会談ですでに約束されていたものであることは特筆すべき事実だ。
1月18日 宮古島、下地空港の米海兵隊による使用申請を沖縄県が拒否。訓練予定は撤回となる。
1月21日 那覇市にてミサイル避難訓練実施。
1月23日 通常国会招集。岸田内閣の支持率は過去最低の28.1%で危険水域とされる30%を下回る。防衛費増額や敵基地攻撃能力の保有など、安全保障政策の国民への説明が「不十分だ」との答える人が8割を超える(ANN調べ)。また、岸田首相の施政方針演説から「沖縄に寄り添う」との文言が削除された。
1月24日 台湾・蔡英文総統がローマ教皇に対し、「中国との戦争は選択肢に無い」との書簡を送っていたことを公表。
1月26日 米軍グアム新基地開局式。在沖米海兵隊の約3割にあたる4000人が2024年から移転を開始する。この基地建設に日本政府は約30億ドル(約3890億円)の資金協力をしている。
「戦争の足音がする。」そのような言い方をSNSで頻繁に見かけるようになるし、沖縄に暮らしているとそれを痛切に感じるのは事実だ。しかし、その空気にはどこかシナリオがあるような、あらかじめ決められたレールの上を走っているような不自然さも漂ってはいないだろうか。細かく時系列を追うと、日中のホットライン設立など、「軍靴の音」を遠ざける試みも行われているが、それが報道される割合は非常に少なく感じる。