眼科医が警告「ブルーライトカットメガネは子どもには勧めない」臨床実験の結果「近視を進行させてしまう恐れがある」の衝撃
自分では目によかれと思って続けている習慣が、実は科学的根拠が乏しく、逆に目の健康を危険に晒している可能性がある。今回は、特に勘違いされがちな「ブルーライトカットメガネ」について、そしてそもそも視力改善とはいったい何をもっていうのかを説明する。『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書) より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』#2
×ブルーライトカットメガネをかけているから大丈夫
〇ブルーライトカットメガネはあまり効果がない
ブルーライトカットメガネは、どれくらいブルーライトをカットしているか?
ブルーライトカットメガネは、特に有害なわけではないけれども、よくもありません。あえて使うほどの意味はないというものです。
ブルーライトが目にダメージを与える可能性は、たしかに眼科の医学会で指摘されたことです。しかし、その先のブルーライトカットメガネの推奨は、学会主導ではなくメーカー主導で起こったものです。言ってしまえば、「新しいものを世に出し、売りたい」という商業ベースで普及してきたものなのです。
私自身、眼科専門医として、ブルーライトカットメガネは「悪くもなければよくもない」と言うしかありません。
すでに述べたように、ブルーライトが目にダメージを与える可能性は指摘されています。にもかかわらず、なぜ私がブルーライトカットメガネを特に推奨しないのかというと、それには理由があります。
ブルーライトを完全に遮断するレンズだったら、ものの色が違って見えるはずです。つまり現在、市販されているブルーライトカットメガネは、ブルーライトを完全にカットしているのではなく、30〜50パーセント程度が通常です。
つまり、こういっては厳しいかもしれませんが、ブルーライトカットメガネの効果はほどほどですから、医師としては否定しないまでも、特に推奨もしないというわけです。

ブルーライトをカットするより有効な策がある
ブルーライトが目にダメージを与える可能性は長く指摘されてきたとはいえ、実は、具体的にどんなダメージを与えるのかはいまだに判然としていません。一つ考えられるのは、ルテインが加齢と共に低下することで、ブルーライトの青色のダメージを受けやすくなることです。
ルテインは、見ているものの色彩や形をハッキリ捉える機能を果たしている「黄斑」に必要な成分であり、「天然のサングラス」とも呼ばれています。それが加齢と共に減少すると、ブルーライトの悪影響を受けやすくなる可能性があります。
この可能性をとるならば、40代以降のブルーライトカットメガネの使用は、青色のダメージから多少は目を守る効果が期待できる……かもしれないという程度にすぎません。
実はブルーライトカットメガネの使用群と不使用群とでは、目の健康度に有意差が見られなかったという臨床実験もあり、やはり、まだまだ判断がつきかねるというのが現状なのです。
本当にブルーライトを危惧するのなら、デジタルデバイスの使用時間を区切る、デジタルデトックスの日を定期的に設ける、デジタルデバイスの画面からの距離をしっかり確保するといった対策のほうが、よほど効果的といえます。
ちなみに「ブルーライトカット」をうたうフィルムをパソコンやスマートフォンのモニターに貼る、夜はスマートフォンを「ナイトモード」にするなどの対策は、まったく無意味とはいいませんが「気休め」程度と考えてください。
これらの対策をとっているからといって、休憩を入れずにパソコンを使い続けたり、真夜中までスマートフォンを見続けていいわけではありません。現に、ある調査機関が行った「iPhoneのナイトモード」の実証実験では、「有意差(効果)はなし」という結果が出ています。
ブルーライトカットメガネの唯一の効能とは?
現時点で唯一、ブルーライトカットメガネのメリットとして挙げられるのは、睡眠の質の改善です。
人間は古来、自然光に従って生活リズムをつくってきました。簡単にいえば、朝に目覚めるのは太陽が昇って日光が部屋に入るからですし、夜に眠くなるのは太陽が沈んで日光が途絶えるからです。ところが現代人は、自然光以外にもさまざまな光に囲まれて暮らしています。
本来、夜は日光が途絶えて眠くなるはずなのに、部屋に明かりを灯し、パソコンやスマートフォンを延々と見ている。特に強いのは青い光の刺激です。
そこにブルーライトカットメガネを取り入れてあげると、青い光の刺激が軽減され、自然な眠気が起こってスムーズに入眠、質のよい睡眠が得られると考えられるのです。
仕事が終わり、家でリラックスタイムを過ごすときに、ブルーライトカットメガネをかける。今のところは、これがブルーライトカットメガネの一番の有効利用法といえそうです。

子どもにブルーライトカットメガネは、すすめない
一方で、子どもがブルーライトカットメガネを使用することについては、臨床眼科学会など7学会が合同で「基本的に推奨しない」という声明を出しています。
きっかけは、あるメーカーが渋谷区在住の子どもたちにブルーライトカットメガネを無料提供するというキャンペーンを発表したことでした。結局、学会から声明が出されたことで、このキャンペーンは取りやめになりました。
特に子どもにはブルーライトカットメガネを「推奨しない」としたのは、青に近い紫色や赤色の光には、近視を抑制する作用があるかもしれないといわれているのも一つの理由です。さらには人為的に成長期に特定の波長をカットすることが将来の目にとってどういう影響を及ぼすかが不明であるからです。子どもがブルーライトカットメガネを使うと、紫色の光が入らなくなることで近視を進行させてしまう恐れがあるのです。
×視力は誰でも改善できる
〇「仮性近視」はすぐに改善できる
そもそも何をもって「視力改善」とするのか?
視力を改善することはできるのか。
この点についてお話しする前に、ハッキリさせておきたいのは「何をもって視力改善というのか?」という問題です。そもそも「視力」という言葉について、眼科専門医と一般の方々との間には大きな認識の乖離(かいり)があるようなのです。
おそらく、みなさんのイメージする「視力」とは、「メガネもコンタクトレンズもつけない状態(裸眼)でどれくらい見えるか」でしょう。この「どれくらい見えるか」には、「どれくらいものがハッキリ見えるか」だけでなく、「どれくらい視野が広く見えるか」なども何となく含まれている印象です。ざっくり「ものを見る機能」全般を指して「視力」と捉えているのではないでしょうか。
一方、眼科専門医の言う「視力」は、より厳密です。
「視力」とは、医学的には「ものを見る機能」全般を指す言葉ではありません。
では何を「視力」と呼ぶのかというと、「視力検査表のランドルト環(Cの字)を判別する力」です。
世の中には、視力が高いけれども真っ直ぐ歩けない人もいれば、視力が低いけれども真っ直ぐ歩ける人もいます。つまり「視力」とは「ものを見る機能」の一つの指標にすぎないのです。

裸眼視力の改善は、視力低下の原因による
そのうえで、改めて「視力を改善することはできるのか」──一般的なイメージに合わせて、この問いを「裸眼視力を改善することはできるのか」と置き換えて答えるならば、改善できるかどうかは視力が落ちている原因によります。
例えば、数値的には同じ0.1以下の近視でも、眼軸(目の直径)が伸びてしまって遠くが見えなくなっているケースと、毛様体筋という筋肉が緊張して遠くが見えなくなっているケースとでは、改善できる可能性が大きく違ってきます。
前者の場合は、視力が0.1以下になるほど伸びてしまった眼軸が、何らかのトレーニングで短くなって視力が改善するというのは考えられません。
では眼軸が伸びてしまったら、一切近視の改善は不可能かというと、そんなことはないのです。
0.1を切る前であれば、適切なトレーニング法で、ある程度までは視力を改善することは可能です。0.01を0.1にすることはできないが、0.1を0.2以上にすることはできるということです。
また、0.01からの視力改善はできないとはいっても、適切なトレーニング法で「ものが見えやすくなる」という効果は期待できます。
検査値としては0.01を0.1にすることはできずとも、「見え方」が改善されることで日常生活の不便が多少なりとも解消される。こういう効果をも視力改善と見なすのであれば、誰でも一定程度は「視力を改善することができる」といえるのです。
ただ、そこでも「子どもはトレーニングに集中できないから効果が出づらい」「高齢者は脳科学的な問題が絡んで効果が出づらい」といった制約が生じる場合があることも事実です。効果が出る、出ないは複合的に捉えなくてはいけません。
「仮性近視」はすぐに改善できる
さて一方、先に挙げた例のうちの後者は、毛様体筋の緊張により一時的に近視が強くなっている「仮性近視」です。これは少し休んだり眼球を温めたりして毛様体筋の緊張が緩和されれば、一時的に強くなっていた分は解消されます。
例えば、もともと0.2だった視力が仮性近視で一時的に0.1になっていたとしたら、毛様体筋の緊張を緩和させることで、0.2まではすぐに改善できるということです。
そもそも、ものの像を結ぶ能力という意味での視力は、移ろいやすいものです。朝と夜とで大きく異なることも珍しくありません。例えば視力検査で1.5と出ている人でも、ドライアイ気味で日中ずっとパソコン作業をしていたりすると、時間がたつごとに見えづらくなっていく場合があります。
このように「絶えず目を使っているなかでの視力」を「実用視力」といいます。
今の例でいうと、ドライアイを原因としてパソコン作業中に視力が下がるのは、「実用視力が落ちている」ということ。そして、こうした実用視力の低下は、目を温める、休めるなどの対策によって簡単に改善することができるわけです。

どんな視力改善法も「万能」ではない
眼軸が伸びている近視なのか、筋肉疲労からくる仮性近視なのか。この違いにより、視力回復トレーニングの効果の出方についても、少し説明が変わってきます。
例えば、100円ショップで売っている視力改善メガネにも効果はあります。ただし、これで改善できるのは仮性近視だけ。つまり一時的に強くなった近視を改善できるだけです。それも、かけたらすぐに効果を感じられる代わりに永続性はありません。筋肉の疲労と共に、またすぐに仮性近視になってしまいます。
眼軸が伸びている近視の視力改善トレーニングとしては「ガボール・アイ」が挙げられます。こちらは2週間〜1カ月をかけて、じっくりと視力改善していきます。永続的ではないのですが、半年ほどは効果が持続します。ただある程度効果は限定的で視力0.2程度の回復と言われています。
いかがでしょうか。ひと口に「視力改善」といっても、言葉の捉え方によってさまざまなケースが想定できることがおわかりいただけたかと思います。
このあたりの言葉の意味合いも明確にしたうえで、果たしてご自身は何を求めるのかを考えてみてください。
どのような医学的手法も万能ではありません。よく「これだけですべてよくなる」というようなうたい文句を見かけますが、本当に効果のある手法は、何であれ限定的な効果にとどまるものです。
正しい知識があれば、「可能なこと」「不可能なこと」の線引きができます。過剰に期待することなく、かといって何もかも諦めることもなく、自分の目のためにできることを可能な限り取り入れていきましょう。
文/平松類 写真/shutterstock
『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書)
平松 類 (著)

2023/9/6
¥990
224ページ
978-4815621841
習慣を見直せば「一生見える目」は手に入る!
・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない
1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。
・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない
1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。
第1章 巷にあふれる「目の健康常識」は眼科専門医の非常識
× ブルーベリーは目にいい
× 緑を見ると目にいい
△ 暗いところでものを見ると目が悪くなる
× メガネを使うと近視が進む
× 若いうちは老眼にならない
△ 現代人の目にはブルーライトカットメガネが必要
× 視力は誰でも改善できる
× 視力を取り戻したかったら、視力回復手術を受ければいい
× 眼トレは、やればやるほどいい
第2章 その習慣、目にとっては「拷問」です
× 習慣的に目を洗う
× 目薬を差したときに目をパチパチする
× 目が充血したら、「充血用の目薬」を使う
× 1カ月以上前に買った目薬を使っている
× ドライアイ解消の最善策は目薬である
× コンタクトレンズの手入れは「ワンステップ」でいい
× ディファイン、カラコンを使っている
× 目をこする
× 目の紫外線対策は必要ない
× 筋トレをめちゃくちゃがんばっている
× マッサージ、ツボ刺激は、視力低下防止、目の疲労回復に効果的
× 目がいいから、検診を受けなくても大丈夫
× 寝付きがいいのは健康のサイン
第3章 放っておいたら危ない「目のサイン」
× 急に視力が落ちてきた
× 急に目が見えなくなった
× ものが光って見える
× 蚊が飛んでいるように見える
× 視野が欠けてきた
× 異常に光がまぶしい
× 目が疲れやすい
× 目がかすむ
× ものが二重に見える
× まぶたが下がってきた
× 目が充血する、かゆい、ショボショボする、ゴロゴロする
× 見たいところがよく見えない、歪んで見える
× 目の健康のセルフチェック法
第4章 知らないと危ない「眼科選び」
× かかりつけ眼科いない
× 手術は眼科医に任せておけば大丈夫
× 「世界水準」を謳う眼科なら安心できる
× ジェネリックの目薬を選んでも、医師に報告しない
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