「うおお。これ、マジかよ……!」

2023年の年明け早々、スマホの画面をのぞき込んでいた私は思わず声を上げた。Google Mapsの検索窓に、イスラム教の信仰施設を意味する「Masjid」(モスク)という単語を打ち込み、日本全体でヒットした結果を北から順番に眺めていたのだ。そこで、宮城県のとあるモスクに目が釘付けになった。場所は黒川郡大衡村、施設名は「オオヒラ・モスク」である。

【急増する異国の信仰施設】俺のバアちゃんの家の隣村に「農家の居抜きモスク」が…! 宮城県で見つけたパキスタン訪問記_1
仙台市内から北に約20キロの場所にある「オオヒラ・モスク」
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驚いたのは個人的な事情ゆえだ。同じ黒川郡の大和町に、私の母方の実家がある。小学生時代は夏休みに1ヶ月くらい滞在して地元のラジオ体操に通っていたりしたので、かなり親しみを覚えている土地である。

以前、私は『文春オンライン』で、地元の滋賀県東近江市能登川地区に誕生したモスクの訪問ルポを書いたことがあった(参考)。ところがなんと、自分の「第二の故郷」にもモスクができていたのだ。正確には祖父母の家から12キロほど離れているが、家の前を通る国道457号線をまっすぐ北に進んだ場所であり、過去に通りかかっていたとしてもまったくおかしくない。

モスク、ここ10年で急増中

近年、日本では在日外国人の数が大きく増えた。

東日本大震災の翌年である2012年から、2019年までの伸びは44%増だ(近年はコロナ禍で伸び悩んでいるが、長期的に見れば今後も増えていくだろう)。それとともに目立ちはじめたのが、「ガチ中華」に代表される移民たちの「ガチ」なレストランや、いまやドン・キホーテにも数多く並ぶ彼らの食材である……。だが、実はやってきたのは食だけではない。彼らは母国から「信仰」も持ってくるようになった。

一昔前まで、日本に在留する外国人は中国人が多く、彼らは宗教的には日本人と感覚が比較的近いか無宗教(中国は社会主義国なので信仰を持たない人も多い)だったので、「移民の宗教」というトピックはあまり目立たなかった。だが、近年は在留外国人の多国籍化が進み、事情が違ってきている。ベトナム人、カンボジア人、インド人など、さまざまな国の人たちが日本国内に自分たちの信仰施設をつくるようになったのだ。

【急増する異国の信仰施設】俺のバアちゃんの家の隣村に「農家の居抜きモスク」が…! 宮城県で見つけたパキスタン訪問記_2
兵庫県姫路市内にあるベトナム寺院・大南寺(Chùa Đại Nam)。近年はこうした異国の宗教施設が増えてきた(撮影:Soichiro Koriyama)

私は中華圏を専門とするルポライターだが、コロナ禍以降、日本国内で中国人以外の在日外国人を追いかけることも増えた(ベトナム人不法滞在者については、『北関東「移民」アンダーグラウンド』(文藝春秋)というルポを2月6日に刊行予定である)。その中でいつしか、在日外国人たちのコミュニティの中心に位置している宗教スポットにも興味を持つようになった。

これらのなかでも、多いのがイスラム教のモスクである。現在、日本国内のイスラム教徒は23万人(日本人信者を含む)もいる。モスクについても、2021年10月時点で全国に113施設あるとされ、かつて2011年時点で確認されたのが70施設だったのと比べると、ほぼ10年で約1.6倍に増えた。