タレントとして活躍する傍ら、SNSや様々なメディアで「フェムテック」や女性の身体や生き方についての発信をして支持を集めるIMALUさん(33歳)。
最近は奄美大島と東京の二拠点生活を始め、ますます自分らしく生きることを実践する彼女が、この4月より性教育がテーマのラジオ番組のDJに抜擢された。収録現場に訪れ番組で扱うテーマや現在の心境などについて聞いてみた。
IMALUさんがDJを務めるのは、毎週日曜の19時30分から20時までのゴールデンタイムの30分間に、FM FUJI局より放送中のラジオ番組『バイエルンから愛を込めて~わたしたちの眠れない夜に~』。
番組のスポンサーは、番組名にもあるドイツのバイエルン地方で生まれ、今や世界的に有名な女性向けマスターベーション(セルフプレジャー)のブランド「ウーマナイザー」。
女性向けプレジャートイブランドがFMラジオのスポンサーを務めることは史上初かもしれない新たな試み。まさに日曜夜に新しい風を吹かせるのにふさわしい番組でDJを担うIMALUさんはその経緯をこう語る。
「元々私が友達同士で始めたPodcast番組『ハダカベヤ」で女性の体や性の悩み、結婚や出産について語る番組をやっていたんです。それをきっかけに出会いが広がって知人を通して紹介していただいたのが北原みのりさんでした。
北原さんは90年代に女性のためのフェムケアブランドを立ち上げフェムテックマーケットの火付け役となった第一人者で素敵な大先輩。
その北原さんから直接、お声かけいただいたので即答で“ぜひ!”と受けさせていただきました。こんな日曜のゴールデンタイムに性教育の話ができるなんて、なかなかない機会ですから」(IMARUさん・以下同)

あのウーマナイザーがスポンサーのラジオ番組に、IMALUがDJとして就任!「“性教育”から滲み出る謎の話しづらい空気を変えたい」
女性用セルフプレジャーグッズ、ウーマナイザーが冠スポンサーを務めるラジオ番組『バイエルンから愛を込めて』。真面目な性教育がテーマの番組DJに抜擢されたのは、IMALUさん(33歳)。赤裸々に思いを語ってもらった。
「ハダカベヤ」がきっかけ

番組のオーガナイザーを務める北原みのり氏と語らうIMALUさん
セックスに関する知識は
友達とのお喋りで得た情報だけ
IMALUさんが「ぜひやりたい」と思ったのには理由がある。
「まず私たちはほとんど性教育を受けていなくて、生理の話はしてもセックスに関することは、友達同士のお喋りの中での情報でしか知らない。
私が3年間住んでいたカナダの学校でも、LGBTQなどについてみんなで話し合うクラブ活動のようなものは設けられていましたが、実際授業で受けることはなかなかない。
番組では性教育の先進国にその国の性の話を聞くコーナーを設けたり様々なセクシャリティのスペシャリストとゲストトークしたりと、学べることが多いと思ったからです」
さらに、30代になってから周囲からの様々な結婚や出産へのプレッシャーもあり、それらに対して自分なりに向き合いたかったからだともいう。
「30代になってから周囲に『いつ結婚するの?』『子どもは作るの?』と質問されるようになって、すごくプレッシャーを感じて嫌だったんです。
自分はまだほしくはないけど、出産適齢期的なものもあるだろうから、この番組を通して様々なことを学んだり考えて、ただ無知のままでいるのではなく、まずは自分の体の仕組みについて知りたいと思いました」
今回お邪魔した収録現場では、医師へのインタビューによる性感染症に関する情報発信と、生理に関するリスナーのメッセージ、そしてサニタリー商品の紹介が行われた。
IMALUさん本人もサニタリー商品にはかなり“救われた”と言う。
「私は10代で初潮を迎えてから経血の量は多めでした。それと私の場合はストレスを感じた月は遅れがちになったりして、自分の精神状態が生理周期にかなり影響を与えることが多いんですね。
だから、20代の時は仕事の時に“今日来るかな?”って思いながら一応ナプキンを1日中つけていたんですが、それがハズレたりするとナプキンを無駄にしてしまう。
そうして無駄にしてしまうのもストレスだったし、いつ来るかわからないコントロールのできなさもストレスでした。でもそんな時に吸水ショーツに出会って生理期間との付き合い方が劇的に変わって、救われたんですよね」

また、人間関係によって受けるストレスも「20代の時はそのままストレスを受け入れてしまってたけど、30代になってからは受け流せるようになってきた」とIMALUさん。
だんだん「人は人、私は私、と思えるようになった」と言う。
そして番組ではIMALUさんも救われたという吸水ショーツも紹介。こういった情報発信によって「一人でも多くの女性のQOLが上がることを願いたい」と語る。
IMALUさんとウーマナイザーとの出会い
すでに4月2日に放送された番組1回目では「ウーマナイザー」からセクソロジスト(性科学者)の女性、エリザベス・ノイマン氏が登場し、IMALUさんとzoomを通してドイツの性教育事情や避妊の話などをした。
IMALUさんはウーマナイザーとの初めての出会いを語る。
「私はイギリスのアーティスト、リリー・アレンが大好きでInstagramもフォローしているんですが、彼女が数年前にウーマナイザーの宣伝のポストをしているのを見て、初めてその存在を知りました。
すごい衝撃的でした。有名な歌手が自らセルフプレジャートイとコラボレーションするって日本じゃあり得ないじゃないですか。すごいカッコいい、素敵だなと思いましたね。
その後まさか、こうしてスポンサー番組のDJをやらせていただくことに繋がるとは思いもよりませんでしたが…」
リリー・アレンがウーマナイザーと提携したコラボ商品は2020年に発売開始。
リリー本人もローリングストーン誌に「マスタベーションは“セックス”のカテゴリーに分類されがち」だと語り「みんながみんな、必ずしも恋愛中なわけじゃないし。性的快楽は必ずしも、誰かと一緒に感じなくちゃいけないわけでもないわ」と言及。
そもそもセックスとセルフプレジャーは別物なのだから、パートナーがいようといまいと、活用するべきだと勧めている。
IMALUさん自身にも女性のセルフプレジャートイについての印象を聞いた。
「なぜかプレジャートイは男性が使うもので女性は使うものじゃないというイメージがある。それにまだ、カップルで使うことはあっても女性がひとりで主体的に使うものというイメージはついてませんよね。
でもそれっておかしいと思う。男女ともに食欲や睡眠欲があるように性欲だって性別関係なく人によって違うわけなので、そこを楽しむことに性差はないと思うんですよね」
また、近年様々な活動をする中で「セルフプレジャー(マスターベーション)という言葉の登場とともにその印象は変わった」という。
「昨今ではセルフプレジャーという言葉を使うことが主流になり、私もその言葉を知ったのは数年前ですが『自分の(セルフ)の喜び(プレジャー)としてやること』という意味がダイレクトに伝わるから、自然と『健康に繋がることなんだ』と感じられて、すごくいい言葉だなと思ったんですよね。
セルフプレジャーの話も、性教育にも繋がることですけど、なんとなく話しづらいっていう日本の謎の空気が出ちゃっているので、こうしてラジオで発信することでちょっとずつでも変えていきたいと思いますね」

ラジオの放送期間は未定だというが、できる限り続けていきたい、とIMALUさん。最後にタイトルにある「眠れない夜」についても聞いた。
「誰にでも眠れない夜はありますよね。ない人なんていないんじゃないかな? 以前は眠れないことに焦っちゃって“寝なきゃ寝なきゃ”ってなってたんですけど、最近では諦めて起きてます(笑)。
そんなふうに焦るよりも、ゴロゴロしながら好きな音楽や海外ドラマを見ていたら、自然とうとうとしてくるから。そうして自分とうまく付き合っていけるようになりましたね」
番組の始まりは俳優の篠井英介さんのナレーションで始まり、終わりには滝内公美さんの「あなたに眠れない夜が訪れませんように」という優しい声で幕を閉じる。
日曜の夜の憂鬱を切り替えるきっかけになるかもしれない。
取材・文/河合桃子 写真/井上太郎