自分が話しているのは「正解」ではない

彼の言語化能力やトークの面白さも当然ながら、ラッパーとして活躍する側ならではの、批評家ではなく“プレイヤー側”だからこそ感じ取ることができる、作品やアーティストに対するオリジナルな「分析」に、多くのリスナーが興味を持っている。

「イベントで感想や分析、自分のリスナーとしてのヒストリーを語るだけじゃなくて、なにを聴いてどんな部分に影響を受けたのか、そこで自分のラップやCreepy Nutsとしての活動にどう刺激を与えているのかも、ちゃんと形にしたいんですよね。『R-指定はこの人のこういう部分が好きやから、こんなラップをするんや』みたいなことがわかるような内容は意識してます」

そして、そういった「思考」は、現在進行系で自身の作品制作にも繋がっているという。

「自分自身でも、トークイベントの前にテーマとなるアーティストの作品を聴き直して、『やっぱすごいわ』と再認識することも多いし、昔は気づかなかった要素がわかるようになっていたり。そういった分析も含めて、このイベントを通して、理解はもちろん、更に自分のラップのスキルも伸ばすことが出来たと思いますね」

「俺の分析は、あくまでも想像や妄想です」。R-指定(Creepy Nuts)が「日本語ラップ」を読み解き始めた本当の理由_3
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またネットやSNSの発達に沿って、様々な「読解」が目に留まるようになった現状も、ラジオやイベントで「分析」を話しやすくなった一因だという。

「アニメやドラマ、映画みたいな、エンターテインメントや創作物に対して、考察を発信したり、分析を楽しみにする人が増えたと思うし、それがラップにも広がってきていると思いますね。だから、ラップやライミングを考察したり、背景を分析するリスナーが増えたことが、俺の話を聞いてくれるキッカケにもなってるのかなって。

同時に、もしかしたら自分の解説やイベントを通して、分析的にラップに向き合ったり、いろんな解釈をする人が増えたとしたら、それはすごく嬉しいことです。音楽だからフィーリングで、“音”として聴く面白さに加えて、『それがなんで楽しいか』を考えたり、話し合うのも、また楽しいと思うんですよね」

取材・文/高木“JET”晋一郎 撮影/田中健児

#2 R-指定のヒップホップ・レジェンドたちへの「異常な愛情」はこちら

『2022年日本語ラップの旅 -Rの異常な愛情 vol.2-』
R-指定
「俺の分析は、あくまでも想像や妄想です」。R-指定(Creepy Nuts)が「日本語ラップ」を読み解き始めた本当の理由_4
2022/12/7
1,650円
256ページ
ISBN:978-4864944021
R-指定が日本語ラップの魅力を語り尽くす──。
大人気トークイベント『Rの異常な愛情』待望の書籍化第二弾!

最強のバトルMC、そして大人気ヒップホップユニット・Creepy NutsのR-指定。
2018年12月に始まり、現在も行われているイベント『Rの異常な愛情──或る男の日本語ラップについての妄想──』の書籍化第二弾。
彼が偏愛してやまない日本語ラップのレジェンドアーティストの名盤・リリック・スキルを、聞き手を務めるライター・高木"JET"晋一郎とともに分析&妄想して徹底解説!
雑誌『BUBKA』連載時より加筆&脚注追加が行われ大幅にボリュームアップ!
日本語ラップ通からヒップホップ初心者まで、ぜひとも読んでいただきたい一冊に仕上がりました。

【本書で主に取り扱っているアーティスト】
Zeebra
梅田サイファー
ケツメイシ
韻踏合組合
DABO
(掲載順)

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