日本では知られていない有名ジャンル
最近、シティポップという言葉を日常で目にする機会がとみに増えた。日本の70年代から80年代初頭のあの音楽ジャンルが、時を経て再評価されたわけだ。
実はストリーミング音楽業界のデータで見ると、シティポップの海外でのブームは松原みきや亜蘭知子、竹内まりやらの名前とともに既に2020年ごろには起こっていた。その後、日本で逆輸入的な再評価が起こったという流れだ。
ちなみに全世界186カ国で展開する音楽ストリーミング・サービス、Deezerで日本エディターをつとめる筆者が、2020年後半にプレイリスト「Japan City Pop」を作ったところ、すぐに日本関連プレイリストのグローバル・チャートで上位に来る人気プレイリストになった。
しかし当時から今もなお、日本関連で世界的に最も人気のある邦楽のプレイリストは別にある。
他ならぬ、今回のテーマであるLo-fiヒップホップを扱った「Japan Lo-fi Chill」が、それだ。このジャンルは、まだ日本では馴染みが薄い。Lo-fiヒップホップという言葉を聞いたことのある人は、日本ではまだ少数派だろう。
簡単にまとめるならば、夜中から明け方にかけての時間帯の勉強や作業中に聴くのにもぴったりな、ローファイ(Hi-Fiの対義語で、アナログ機材や生音を用いた音、もしくはそういった音を指向する様子)な音質でゆったりとしたダウンテンポのビートを刻むヒップホップ・トラックのこと。ラップや歌がない場合も多々ある。ジャズやソウルなどのレコードからのサンプリングがしばしば使われることも関係するのか、温かさと切なさの宿ったチルアウト・サウンドだ。
日本ではブームになったことがないどころか、ほとんど知られていないLo-fiヒップホップ。このジャンルがしばしば日本と結び付けられる理由として、ジャンルのオリジネーターとして故J・ディラと共に語られ、今も尊敬される故Nujabes(ヌジャベス)の存在に触れないわけにはいかないだろう。