草太はなぜ椅子にならなければいけなかった?

北村 ちょっと話がそれますけど、ぼくは草太にあまり魅力を感じなかったんですよ。もちろん人それぞれだと思うんですけど、生々しさがあまり感じられませんでした。

土居 今回、草太は松村北斗というSixTONESの子が声優をやっていて、かつてハウルを木村拓哉が演じていたことを連想させますが、アイドルもまた「人間であって人間ではない」ところがありますよね。そういった存在が草太を演じることには必然性があるように思えます。

北村 なるほど。そもそも閉じ師というキャラクターも、もともと「人間と人間ではないもの」の間ぐらいなのかもしれないですけど、それが椅子にされてしまう。今作は移動のシーンが多いですが、男性が女性を先導するのではなく、女性に持ち運んでもらわないと動けなくなっている。

また3本足というのも特徴的です。今作には性だけでなく、いろんなマイノリティー性の問題が含まれてると思うんですけど、3本足の椅子っていうのはもしかしたら障がいのマイノリティー性かもしれないですね。

最初は椅子という身体に馴染めないけれど、徐々に身体の使い方がわかってきて、むしろ元あった肉体よりも活発に活劇を演じていく。その辺りも注目すべきポイントなんじゃないかと思います。

土居 マイノリティを肯定的に描いている映画なんですね。