4万8400円のハイエンド盤が、たったの3時間で準備数に到達
——プロジェクトを進めるにあたって、想定外の事態はありませんでしたか?
どのフェーズも大変といえば大変だったのですが、幸いなことにネフェルピトーが初登場したときのような「どうしようもない絶望感」を味わうことはありませんでしたね。強いて言うなら、最も想定外だったのは、第一次受注の際の反響の大きさかもしれません。
あの日は、在宅で仕事をしていて。部屋にこもって、ひとりで特設サイトのオープンを見守っていたんです。受付を開始した時点では、ジワジワと注文がくるくらいだったのですが、ファミ通さんの紹介記事がバズったことで、注目度が一気に跳ね上がって。結局、ハイエンド版は3時間で生産準備数に達し、通常版も即日で予約を一時的に停止することになってしまいました。かなり多めに数を用意しておいたつもりだったのですが……。予約できなかったお客様には、本当に申し訳なかったと感じています。
——予想を大きく上回る反響に、手応えも感じたのでは?
これだけやって、もしも売れなかったらどうしよう、というプレッシャーからは解放されました。でも、素直に喜べたのは、ほんの一瞬です。そこからはむしろ「生産体制を整えて、一刻も早く受注を再開しなければ」ということばかり考えていました。
なんとか体制を整えて、3月には2次受注を開始できましたが、おかげさまでこちらも非常に好調で、ハイエンド版は準備数に到達しました。ただ、通常版についてはまだご用意がありますので、これから軍儀を手に入れたいという方は、そちらをご予約していただければ幸いです。
——商品化プロジェクトとしてはひとまず大成功だと言えると思います。勝因はどこにあったと分析していますか?
まずは何よりも『HUNTER×HUNTER』というコンテンツの力だと思います。それと「軍儀を商品化してほしい」というニーズが、潜在的に高まっていたことが最大の勝因ではないでしょうか。
プロジェクトメンバーにも恵まれました。特に彼らがスピーディーにプロトタイプを仕上げてくれたことは、商品化に向けての大きな弾みになったと感じています。集英社さんをはじめとした権利関係者のみなさんへのプレゼンの際にも、プレイできるレベルの試作品が完成している点を、高く評価していただきました。
あとは社内でも、細かい部分でさまざまな無茶を聞いてもらっていて。たとえば、倉庫での在庫管理ひとつとっても、かなりイレギュラーなオペレーションをお願いしているんです。普段はCDやレコードなどの音楽商品が置いてある倉庫に、いきなり盤台がやってくるわけですからね。発送の際の梱包や検品も、普段扱っている商品とはまったく異なります。それに対応してくれている関係者のみなさんには、感謝してもしきれません。
4月30日のニコニコ超会議で、プロ棋士の公開対局が実現!
——今後の展望を教えてください。
軍儀をより多くの人に届けられるよう、地道に取り組んでいきたいです。ビジネスも念能力と同じで、一朝一夕で成果が得られるわけではありません。たゆまぬ努力を重ねていくしかないと思っています。個人的には、実際にみなさまが軍儀でどんな風に遊んでくれるのかを楽しみにしています。私たちが定めたルールは、あくまで「こういった解釈があるよ」というものに過ぎないと思っていて。多くの人が対局を繰り返すなかで、もしかしたらもっと良いルールが生まれるかもしれない。将棋やチェスがそうであったように、プレイヤーの集合知によって、軍儀が洗練されていけばいいなと思っています。
プロの棋士やチェスプレイヤーにも、ぜひ軍儀を打ってみてほしいですね。実際に、4月30日のニコニコ超会議では、村中秀史七段と伊藤真吾六段による公開対局も予定されています。プロの棋士によって、どんな一手が編み出されるのか、すごくワクワクしています。
取材・文/福地敦
撮影/鳥野みるめ
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