不倫要素だけじゃない、平成ドラマのトンデモ展開
翌年には、松嶋菜々子が清純派のヴェールを脱いだと話題になった『スウィート・シーズン』(TBS系列・1月期)も放送された。上司と部下の恋愛が描かれており、最終的には上司(椎名桔平)が記憶喪失になるという、トンデモ展開へ突入していくという平成さがあった。
今思うと釈然としないのは何となく、男性のほうが不倫愛の手綱を握っていたこと。妻がいる上司を、いつも見送る立場の藤谷真尋(松嶋)。主題歌はサザンオールスターズの「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」だったけれど、その向こうには竹内まりやの『マンハッタン・キス』も流れていたような。
やがて少しずつ不倫の見解が変わっていくのか、2004年の『それは突然嵐のように…』(TBS系列・1月期)では“普通の主婦”が恋に落ちていくという物語に転じていく。
ただし、落ちる相手が山下智久演じる男子高校生だったので、けして“普通”の恋愛ではなかったことだけは加えておく。
今回紹介したいずれの作品も不倫は悲恋として扱われていた。最終的には男女どちらかが人生を犠牲にするような、人間関係ドロドロ愛憎劇だった。ハッピーエンドはまずありえなかった。
余談ではあるけれど、TBSはなんでこんなに不倫作品に強いのだろうか? ピックアップした作品はほぼTBSで放送されている。しかも全作品、いい塩梅で世相を反映している。
不倫ドラマの先駆けともいえる『金曜日の妻たちへ』を制作した昭和期から、不倫愛に目をつけていたテレビ局。ずばぬけた先見の目があったのか。
文/小林久乃
#2「平成後期の不倫ドラマのキーワードは“男性の軟弱化”と“スーパーにも落ちてるくらい身近な不貞愛化”」はこちら