不倫ドラマ百花繚乱期の1997年を振り返る

まずは平成前期の1989〜2004年をたどる。ポケベルを鳴らして連絡を取っていた頃から、携帯電話が普及し始めた時期にかけての不倫だ。この期間は、不倫の関係性のイニシアチブを既婚男性が握っていた。

浮気が発覚しようものなら「一回くらいなら、子どもに免じて許しなさいよ〜」と、ご近所親戚からまくしたてられて、サレ妻は辛酸をなめるのみ。不倫は小金を持った男性の火遊び。そんな時代背景のもと、1997年はやけに不倫ドラマの放送が多かった。

この年の不倫ドラマの金字塔といえばやはり、原作、映画、ドラマの3本立てで大ヒットとなった『失楽園』(日本テレビ系列・7月期)。当時、週刊誌を立ち読みしていたら「昼間の映画館が主婦で満席」になったとかなんとか記述されていた。

田舎に住む駅員の青年がセレブ妻と恋に落ちて逃亡する、豊川悦司主演『青い鳥』(TBS系列・7月期)もこの年だ。都会を知らず、心の擦れていない、無口な柴田理森(豊川)が惚れた相手は地元の有力建設会社の専務で、市長候補の妻。この専務(佐野史郎)が資産と権力をフル活用して、逃げるふたりを追いかける物語だった。
この作品を思い出すと、同時にglobeの『Wanderin' Destiny』が脳内に流れてくる。

『青い鳥』と同クールには、ほかにも不倫ドラマがあった。
今となっては貴重な石田ゆり子の濃厚ラブシーンがあった『不機嫌な果実』(TBS系列)もそれだ。経済的に不自由していない妻が、夫だけでは飽き足らず、編集者や若い男との不倫に溺れていく物語。平成後期に別のキャスティングで再度ドラマが制作されていたけれど、私は前期のほうがダントツ響いた。

とにかく1997年は不倫作品に始まって、終わったような一年だったのかもしれない。