発達障害や精神疾患で悩む人の選択肢を広げたい!

——林田さんは公認会計士の資格をお持ちで、キズキに転職する前は大手会計事務所に勤務していたと伺っています。なぜ就労移行支援サービスを立ち上げようと考えたのでしょうか。

林田 私は発達障害の当事者です。振り返ると、中学生の頃から自分と周りとの違いに苦しんでいましたね。だから将来は、多くの人の生きづらさを支えるような事業に携わりたいと考えていました。

福祉や医療分野などでそういった人たちを直接サポートすることも考えましたが、まずは自分がビジネスについて理解して、稼ぐ力をつけるほうが先だと考えました。それで公認会計士の資格を取得し、会計事務所に就職したのです。

その後、社会人1年目で発達障害の診断を受けました。これまでの辛さの答え合わせができたような気持ちでしたね。同時に「私と同じように悩んでいる人がたくさんいるんだ」と感じ、これまでの経験を活かして「発達障害者が会計士になれるスクールを作りたい」という明確なビジョンが生まれました。

そんなときに目にしたのが、キズキ代表である安田の「発達障害に特化したWebメディアを立ち上げたい」というSNS投稿です。すぐに安田にコンタクトを取り、Webメディアの話を進めながら、私が胸に抱いていた会計士スクールの構想を話しました。すると、実は安田もビジネススクールを設立したいと思っていたことがわかり、そこから事業化を検討。2019年にキズキビジネスカレッジ事業を開始しました。

「“発達障害者は単純作業が得意”は先入観」当事者が立ち上げた、生きづらさを抱えている人たちが適職を探せるサービスとは_1
取締役 林田絵美さん
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——発達障害者向けの就労移行支援事業所はすでにありますが、既存の施設とキズキビジネスカレッジは何が違うのでしょうか。

林田 当時から民間・公的機関ともに、発達障害者向けの就労移行支援を行う事業所はありましたが、学べることは限られていました。障害者として企業に就職する「障害者雇用」の求人は、清掃、梱包、データ入力ばかりです。したがって、就労移行支援の事業所も、それらのスキルの取得を目指すところが多かったと思います。

率直に言ってしまうと、世の中から「発達障害やうつ病の人は単純作業しかできない」と思われていたのだなと感じます。

しかし発達障害にもさまざまな特性があって、得意・不得意は人それぞれ。安田も発達障害の当事者ですが、起業という形で自分の適職を見つけましたし、私は公認会計士という道が合っていました。もちろんデータ入力や梱包などの作業が向いている人もいますが、そこに限定する必要がないと考えていたのです。

私たちと同じように、生きづらさを抱えている人たちが適職を探せる点が、キズキビジネスカレッジと従来の就労移行支援との違いだと考えています。