際立つガンプと周囲とのギャップ
ガンプの人生にはいつも不思議なことが起きる。
本人は気の赴くまま、ただそのままに生きているはずなのに、足の速さが周りに知られるとラグビーでフォワードを任され、輝かしい成績を残してしまう。
またベトナム戦争が始まると、ガンプはスカウトされるままアメリカ陸軍に入隊する。
そこでも真っ直ぐな性格のガンプは軍隊にすっかりとけ込み、人命救助で大きな功績を残して帰国すると、ジョンソン大統領から勲章が贈られる。
本人の意思を飛び越えて、次々とミラクルを起こしていくのだ。
しかしどれだけ人生が上手く転がっても、ガンプは頭の中で常にジェニーを思い続けている。
一方でジェニーは複雑な家庭環境で育ち、成長するにつれて悪い友人や刺激に囲まれて徐々に人生が没落していく。
頭ではわかっていても幸せになる方法を選ぶことができない、ガンプとは真逆のような人間なのだ。
この対照的な2人は時折交差しながらも、それぞれの人生を歩んでゆく。
ガンプはいつもニュートラルで、まわりの出来事とのギャップが際立つ存在だ。
1950年代〜1980年代の激動のアメリカ史、ベトナム戦争やジョギングブームなど、ガンプはいつも周りに囃し立てられ、気付けば時の人になっているのだが、本人は自分のペースで生きているだけなのだ。
ガンプとジェニーの対比、ガンプと社会の対比、そして雄大なアメリカの自然風景やリンカーン記念堂に群衆が集まる反戦運動のシーンなど、CGを多用した壮大なスケールで描かれる迫力のある画作りと、素朴なガンプとの対比。
この映画はガンプの人間味とその周囲のギャップによって、そのどちらもが際立つのだからおもしろい。
走りたいと思ったから走り、戦友との約束を守るためにエビ漁を始め、いつでもジェニーが一番。
とても理想的な生き方なのかもしれない。
「人生はチョコレートの箱みたい。食べるまで中身はわからない」
2023年はガンプのように、オープンマインドで過ごしたいと思った。
文/桂枝之進
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)Forrest Gump 上映時間:2時間22分/アメリカ
知能指数は劣るものの、純真な心と恵まれた身体、母への愛とひとりの女性への一途な思いを貫き続ける主人公フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の人生を、1950〜1980年代のアメリカの歴史を交えながら描いたヒューマンドラマ。第67回アカデミー作品賞を受賞し、世界中で大ヒットを記録した。