洋服誕生150年?
明治5年(1872)11月12日に「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」という太政官布告が出された。国家の官僚が従来の衣冠(いかん)や狩衣(かりぎぬ)といった日本古来の装束ではなく、西洋の王室で用いられているのと同じような礼服へと改めた。世界に対して日本の礼服は、和服から洋服へと変更したことを告げた日となった。
昭和4年(1929)に現在の東京都洋服商工協同組合、昭和47年(1972)に全日本洋服協同組合連合会が、11月12日を「洋服記念日」と制定した。2022年は日本で洋服が誕生してからちょうど150年という記念の年にあたる。
最初に洋服を着た日本人は、ジョン万次郎
日本人で最初に洋服を着た人物は、土佐高知藩の漁民中浜万次郎(ジョン万次郎)、伝蔵、五右衛門らといわれている。天保12年(1841)1月、漁に出航したが、強風によって遭難し、伊豆諸島の鳥島(とりしま)に漂着する。植物採取に鳥島に寄ったアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号によって救助され、ハワイを経て万次郎はアメリカへ向かう。
弘化3年(1846)に万次郎は、伝蔵と五右衛門に再会し、嘉永4年(1851)に3名は日本へ帰国する。3名は長崎奉行から尋問を受け、所持品の検査を受けた。このとき万次郎の所持品として「木綿筒袖襦袢(もめんつつそでじゅばん)」「天鵞絨(ビロード)木綿刷合胴着(どうぎ)」、伝蔵と五右衛門の所持品として「羅紗(らしゃ)筒袖着物」「毛織羅紗筒袖着物」が記されている。それぞれ外国で入手したもので、洋服であることに間違いない。