決勝は「チームや団」のネタだった

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ボケのロングサイズ伊藤はNSC中退後→就職を経て、途中からや団に参加

――う大さんからのアドバイスで、実際に採用されたものもあるのですか。

伊藤 『バーベキュー』のネタで使ったブルーシートとかはそうですね。

本間 伊藤が死んだフリをしている中嶋を包むために、車からブルーシートを引っ張り出してくるシーンがあったんですけど、僕はそれまで「それはみんなで仲よくバーベキューするために用意したブルーシートだから」っ言ってたんです。でも、もともと使う予定だったのなら最初の段階で持ってきているはずだから、わざわざ車に取りに行くのはおかしい、と。

そこを「それはみんなで花見に行ったときに使ったやつじゃん」みたいに言えば、時間的な奥行きも出て、三人の関係性もより深いものに感じられるからいいんじゃない? ってアドバイスをいただいて。いいですね! って、使わせてもらいました。こんな風に、う大さんは矛盾点を突いたあと、必ず代替案を出してくれるんです。

中嶋 そんな人、普通いないんですよ。作家さんとかも「ここ、変じゃない?」とは言うんですけど、じゃあ、どうすればいいかという案までは出してくれないので。

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ボケの中嶋亨。ネタでは「実は一番ヤバいやつ」を担当することが多い
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本間 具体的なことを言ってもらえないダメ出しって、芸人としてはすごく苦しんですよ。

中嶋 あと、ソラタローの足も、う大さんの指摘で修正したんだよね。

本間 『雨』の中で、中嶋は、天気予報のマスコットキャラクター・ソラタローの中身という設定だったんです。その正体を、どこでどうバレるようにするかが結構、難しくて。最初は僕の「君はソラタローの中身なんだよ!」というセリフを盗み聞きされていて、それで伊藤にバレるという風にしていたんです。そうしたら、う大さんが「無理に展開しているだけで、笑いになってないから」ってズバリ突いてきて。「ソラタローに何か癖があって、それで気づくみたいにできないかな」って言うから、じゃあ、足の開き具合で勘付いたと言うのはどうですかって返したら「そうそう」と。

中嶋 すご、って思いましたね。あそこの指摘は。

本間 あれで流れが自然になったし、「そこで気づいていたの?」って笑いどころも増えたんです。

――決勝のネタは、言ってみたら「チームや団」のネタだったというわけですね。

本間 本当にそうなんです。14年間、ずっと疑心暗鬼だったんですけど、この1年でようやくこの方向でいいのかなというのが何となく見えてきました。15年目で初めて準決勝の壁を突破できたのは、僕らが何か劇的に変わったわけではなく、足りない部分をいろんな人のダメ出しで埋めてもらったからなんです。



取材・文/中村計 撮影/村上庄吾

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