4コマ漫画界の革命児、
重野なおき先生の最新作にして最高傑作
まず4コマ漫画史において、著者の重野なおき先生が果たされた功績を語らせてください。
1980年代は、新聞の4コマ漫画『コボちゃん』でもお馴染みの植田まさし先生や、『パロ野球ニュース』のやくみつる先生などが、描き手として名を連ねた4コマ漫画専門誌が数多く発刊されていました。この時代の4コマ漫画雑誌は「おじさん読者が隙間時間に読む」性格が強いものが多かったです。’90年代に入ってそこへ彗星のごとく現れたのが、『幕張サボテンキャンパス』のみずしな孝之先生、『せんせいになれません』の小坂俊史先生、そして本作の重野なおき先生と、みずみずしい感性をもつ若い世代の作家でした。この3人を中心に、4コマの世界で「おじさんが興味のある題材、登場人物」にとらわれず、「若い世代の等身大の青春模様」を描いた作品が発表され始めたのです。新しかった。1本で必ずしもオチをつけない、キャラクターが季節を追うごとに変化していく…当時の「当たり前」を崩し続けたのです。
前置きが長くなりましたが、さて、今回の『雑兵めし物語』。重野先生は、子育てもの、家族もの、警察ものなど多彩なジャンルの作品を発表しておられますが、アニメ化され、現在も連載中の『信長の忍び』や、『軍師 黒田官兵衛伝』など、戦国時代ものの4コマ作品を数多く制作されています。今作では、またさらに新しい可能性を示しました。今までは実在の武将をもとにキャラクターを仕立てていたのに対し、本作は完全にオリジナルキャラ(一部実在の人物も登場)。名もなき雑兵の食にフォーカスしながら、周囲の人間模様も交えて物語が展開するのですが…これが本当に面白い。まさに少年漫画ど真ん中! 男気あふれる主人公の雑兵・作兵衛に、ヒロインである武家の姫・つる、脇を子分肌の豆助が固めて…といい意味で王道なキャラ配置。昔、週刊少年ジャンプ編集部に在籍していた頃の血が騒ぎました。
今後は、食い扶持に困った新たなゲストキャラを救っていくのか? 武田家に家族を皆殺しにされたつるの因縁が新たな展開を見せるのか? はたまた意外にも立身出世の方向に進むのか? どのルートに向かうとしても、期待大です!
『雑兵めし物語』
重野なおき 1巻発売中/竹書房
「まんがライフオリジナル」連載中
芋がら縄、干し飯、あつめ汁…塩尻峠の戦いに小笠原軍の雑兵として参加した主人公・作兵衛を軸に、戦国時代の雑兵の食事情を描いた物語。