『父娘ぐらし』|理想の“お父さん”のヒーローがこの中に存在しているんです【マンガ編集者を唸らせるこのIPPON|浅田貴典】_1
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理想の“お父さん”のヒーローが
この中に存在しているんです

 育児エッセイコミックって、例えば青沼貴子先生の『ママはぽよぽよザウルスがお好き』から、西原理恵子先生の『毎日かあさん』まで、幅広いですよね。その中には、吉田戦車先生の『まんが親』、福満しげゆき先生の『妻と僕の小規模な育児』のように、父親目線で育児を描いた作品もありますが、例えば『まんが親』は子どもというよりは吉田戦車・伊藤理佐夫妻のキャラクターに強く焦点が当てられているし、『妻と僕の小規模な育児』でも、福満先生は、ちょっと引いた視点から妻と子を描いています。

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 ところがこの『父娘ぐらし』は、これまでありそうでなかった、父親がメインの育児というものを真っ向から描いてみせている。作者の渡辺電機(株)先生は、55歳で16歳年下の二人の子をもつシングルマザーの女性と結婚、理由あって、急遽8歳の娘との二人暮らしを送ることになります。実際は、さぞかし大変な日々だと思うし、ともすれば「育児の負担や苦労をわかってもらいたい」といった共感や泣きを誘う内容になってもおかしくないのに、全然ウェットじゃなくて、全体のムードはからっとしてる。

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 もともとギャグマンガ作家なので、観察力が鋭く、日常を面白く描ける力をもっている方なんですが、それに加えて本作が新しいのは、育児への距離感が「ちょうどいい」こともあるのかも。失敗やアクシデントがあっても自分の中でうまく消化して引きずらないんです。

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 もともとはnoteというWEBサービスで「父子家庭はじめました」のタイトルで連載していて、このたびめでたく単行本化を迎えたわけですが、実は連載時からすごく好きだったんです。自分でも何がこんなに刺さるのかうまく言語化できていなかったんですが、やっとわかりました。あっ、ここで描かれている渡辺先生は、私の理想のお父さんのヒーロー像なんだ!と。「これで本当にいいのか?」と悩むことはあっても、最終的には「まあいいか!」と自己解決して、常に飄々としているお父さん。照れながらもちょっぴりハードボイルドを気取って見せるラストシーンも素敵です。

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『父娘ぐらし
55歳独身マンガ家が
8歳の娘の父親になる話』

渡辺電機(株)/KADOKAWA

55歳独身マンガ家である作者がシングルマザーと結婚。諸事情で、小学生の娘との二人暮らしをすることに――。それまでの人生で感じることのなかった喜びや発見が押し寄せる。

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