『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』はアニメを変えるか?
――これまでのお話を伺う限り、今回の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は完全手描きで制作するよりもかなりのコストがかかっていそうですが、その一方、今回作ったキャラクターや背景などのアセットをTVシリーズや新作映画の制作に活用することも可能なのでしょうか?
まさに今回作ったものは「アセット=資産」であり、今後にそのまま使えるものがたくさんあるので、制作コストを下げられるはずです。
――制作したキャラクターの3Dモデルはフィギュア化などにも使えるのでしょうか?
今回はタイミング的に間に合わなかったということもあるのですが、将来的にはありだと思っています。フィギュアって金型を作るのに長期間かかるので、モデルデータを活用し対応できるようであれば、大きなメリットが得られると思います。
ちなみに『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の関連商品を作る際の絵素材は、手描きではなく全部モデルデータを元に作られています。
――東映アニメーション社内にも、3Dのスタッフは増えているのでしょうか?
この10年くらいかけてものすごくスタッフが増え、国内でも有数の規模になってきています。元々ゲームを作っていた人もいれば、最近では専門学校を出てそのまま入ってくる人もいます。3Dの世界では「その人にしかこれは作れない」みたいなスーパープレイヤーがいるのですが、彼らを巡っては国内だけじゃなく世界中のスタジオと争奪戦が繰り広げられています。
――今後さらに3Dとそのクリエイターの需要は上がっていきそうですね。東映アニメーションは2Dアニメの老舗中の老舗ですが、やはり3Dには大きな可能性を感じているわけですね。
かなりの可能性を秘めている領域だと思いますよ。今回は時間もコストも結構かかってしまいましたが、コンピューターやソフトウェアの性能向上に応じてやれることは広がるし、スピードも上がり、コストも安くなるはずなので、そこにも大きな期待をしています。
今後も3Dを活用したセルルック作品をたくさん作っていけるかどうかは、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』がどう判断されるか次第だと思っていましたが、世界中でかなり良い評価をいただいていており、各国主要映画評価サイトで『ドラゴンボール』史上最高ポイントを獲得しています。
この結果からも「『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、アニメの大きな転換点になる可能性を持ったエポックメイキングな作品になれたんじゃないか」と感じています。
取材・文・撮影/照沼健太
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