運転手が証言「遺体が切断され、パーツがバラバラのことも…」
<要注意の例>
実際に転落しそうな状況を、現場の経験から拾い上げてみると、こんな具合になる。
「自分が直接対応したものだと、千鳥足で柱に寄りかかっていたものの、どんどん前のめりになって柱から体が離れ、勢いよく線路に落ちた酔客がいました。最初から危ないと思って目をつけていたので、迅速な対応ができて幸い事故は免れましたが、お客さまは落ちた際に上手く受け身が取れず、足を引きずって帰られました」(25歳の駅員)
また、酒に酔って転落するパターンの実に6割が、ベンチから立ち上がってそのまま直進して線路に落ちるケースだという。
「なんでそんなことになるのか理解できないのですが、かなり酔っているからなのか、動き出しが早すぎるんです。電車の接近を知らせるアナウンスに反応して立ち上がり、そのまま直進してホームに落ちてしまうんです。その方も予期せぬ落ち方をしたんで、少し怪我もしていました。せめて電車が来てから動き出せば落ちることはなかったんですけどね」(26歳の駅員)
視覚障がい者にとって頼もしい盲導犬がいても防げなかったケースもある。東京メトロ銀座線青山一丁目駅の渋谷方面行きホームで2016年の8月、盲導犬を連れて線路側を歩いていた男性が足を踏み外し転落、死亡した。ホームドアがあり、駅員が複数ホームにいれば防げたのではないかという声が大きく上がり、ホームドア整備の推進に拍車をかけた。
しかし、いずれの対策も決して万能ではない。
最後に、実際に人身事故を経験したベテラン運転士の証言を聞いてほしい。生々しいが、とても重要な示唆を含んでいる。
「私も過去に複数の人身事故を経験しています。いずれも自殺を企図されたケースでしたが、前の方でぶつかるとドーンと衝撃音ですぐにわかりますし、後ろのほうで轢いてしまっても山道を車でのりあげるような、ガタガタと激しい音がして、ものすごく嫌な感触が残ります。ブレーキをかけても電車はなかなか止まらないから、その間に覚悟を決めて、現場に臨場します。ご遺体が切断されていたり、パーツがバラバラのこともあり、未だに思い出すこともあります。そのような事故を経験して、運転ができなくなる職員も何人も見てきました。
あと、ホームに落ちるのはダントツで酔っ払った乗客が多いのですが、物を落として拾いにいかれる方も相当数いらっしゃいます。これは絶対にやめて、必ず駅員に相談してください。電車は60キロで走っている時に急ブレーキをかけても100メートルは動きます。急に止まることはできないのです」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班