得体の知れない魅力とパワーを持つ神曲は
これからも聴かれ歌い継がれていく
その後のブルーハーツの快進撃については、多くを語る必要もないだろう。
しかし1995年6月に、まるで空中分解するように突然の解散発表。
半信半疑だったファンの多くは、同年10月にヒロトとマーシーが新バンドのザ・ハイロウズで再デビューした段になって、「あ、ブルーハーツの解散って本当だったのか」とぼんやり認識したのだった。
そのハイロウズも2005年に解散、ヒロトとマーシーは翌2006年に結成した新バンド、ザ・クロマニヨンズとして、現在も活動中だ。
ハイロウズとクロマニヨンズは、ブルーハーツのほとんどの曲を作詞作曲していた結束の強い二人(ヒロトとマーシー)を核とするバンドなのだから、それはもうブルーハーツみたいなものじゃんと思うかもしれないがさにあらず。
意思の固い二人は、ブルーハーツの解散後はどんなことがあっても、ブルーハーツとして発表した曲を演奏することはない。
つまり、件の『リンダ リンダ』をはじめとするブルーハーツの珠玉の名曲の数々は、今や残された音源や映像で楽しむ以外の方法はない。
にもかかわらず、前述のリンダ リンダズや日米の2本の映画(「リンダ リンダ リンダ」と「ミックステープ 伝えられずにいたこと」)の例にとどまらず、のちの世代の人に多大な影響を与え続けているのは、よく考えてみたらすごいことではないだろうか。
後世への影響例を挙げたら枚挙にいとまがない。
たとえば、『リンダ リンダ』をサンプリングした加藤ミリヤの楽曲『BABY! BABY! BABY!』は会場を盛り上げる鉄板曲だ。
春夏の甲子園では毎年、アルプススタンドで『リンダ リンダ』のリフを用いた応援曲が鳴り響く。
アパレル会社クロスカンパニーが2011年に制作したCMで、女優の宮崎あおいがギターで弾き語りした『リンダ リンダ』が耳に残っている人も多いだろう。
他にもラジオなどのメディアではコンスタントにオンエアされるし、カラオケでは誰もが盛り上がるスタンダード曲になっている。
結局のところ、存在が大きすぎてこの曲が持っている得体の知れない魅力とパワーを簡単に見通すことはできない。
ただ、これからも一種のクラシックとして、聴かれ継がれ歌い継がれていくことは間違いないのだろう。
文/佐藤誠二朗