瓶ジュースの引き抜きを初体験

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縦長の取り出し口が今では逆に新鮮

実家にあったのと同じ、瓶ジュースの自販機は、硬貨を入れて瓶を引き抜くスタイルで、こどもの年齢によっては引き抜くのがちょっと大変そうだ。私自身、自分で引き抜いた記憶はないので、おそらくは母が抜き取ってくれていたのかもしれない。

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二本同時に引き抜いたらどうなるのか?という疑問もわいた

瓶ジュースの自販機から、母がたまに買い与えてくれたのはHI-Cオレンジだった。理由は、「コーラやスプライトの炭酸飲料より、体に良さそう」だからだと思う。私は小学校卒業まで炭酸飲料を飲めなかったが、今は母の気遣いもわかる。

そんなことを思い出しながら、HI-Cの瓶を引き抜いた。昔見たはずなのに、初めての感触だった。

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思ったより小さく感じる瓶。昔は飲みきれなかった憶えもある
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テコの原理を使って片手で栓が抜ける

自販機のくぼみの中に固定された金具に王冠を引っ掛けて開栓する。これはほんの少しコツが要る。実家(駄菓子屋)では栓抜きがヒモに吊るされて備え付けられていたので、開栓もこどもにとっては難しかったのかもしれない。

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ペットボトルに取って代わられた大容量の飲料瓶

また、ここには、現在製造されていない1リットル瓶のジュースもあった。サンプルだけで、購入はできなかったが、実家の店の冷蔵ケースにも陳列されていた光景が湧き上がるように思い出された。

駄菓子屋とこどもと瓶の保証金

返却用の箱を見て、瓶飲料には「保証金」があったことも思い出した。中身を飲んだ後に瓶を店に返却することで20円ほどキャッシュバックされる。

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酒屋でおなじみの瓶ケースは駄菓子屋にもあった

マイナーな瓶ジュースメーカーよっては、再利用前の商品のラベルの上から別のラベルを貼っており、これが透けて見え、疑問に思ったこともあった。

なかには、どこかから拾った瓶を持ちこんできたり、私の実家の裏手に保管している瓶ケースから空瓶をくすねて別の店に持っていき、保証金をせしめたりする幼き不逞の輩もいた。
駄菓子屋は、そんな小さな悪事を見咎められ、店に叱られ、罪だと教わり、成長につなげてもらえる場所であった。

「こどものとき、お前んちで叱られたっけな」というような話を、何年も経って幼なじみから聞いたことがあった。もちろん恨み言ではない。そこには感謝があった。

古い自販機といろいろな世代

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まるで駄菓子屋のように多くの人が集まっていた

中古タイヤ市場を訪れるお客の、目的の自販機はそれぞれ違う。

食べ物以外にも、電池やカメラフィルムなど、今はもう見かけない自販機がズラリと並ぶ様子は、もうすぐ50代に突入する我々世代には懐古であり、若者には博物館であり、小さなこどもには新しい体験だ。

どの世代もこの場所を、また懐かしい思い出につなげていくのだろう。自販機はどれも相当な年季が入っていて、いつまで稼働できるかは素人目にも安心できるものではないが、多くの人の思い出の中でずっと売り切れずに動いていてほしいと願った。

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文・写真・イラスト/柴山ヒデアキ
撮影協力/「中古タイヤ市場 相模原店」神奈川県相模原市南区下溝2661-1 ℡042-714-5333 営業:10-19時 水曜定休