遠い国の差別問題は私たちの日常につながっている
元教師のレナは、旅先のインドでとある少女に出会う。「女に勉強は必要ない」と言われ、学校に通うことも許されず毎日働かされている彼女たちのため、レナはインドに学校を作ろうと動き出す――。国も年齢も違う女たちが手を取り合って共に闘う、勇気と感動の物語。
インドのような遠い国の少女たちが《学校に行かせてもらえない》あるいは《幼いうちに本人の意思に反して結婚させられる》という問題をどこかで聞いたことがあるかもしれない。私たちはときに彼女たちの不幸を、遠い世界のしかたないできごとだ、と目をそらしてしまう。
だが、この小説で彼女たちが直面するできごとを読んでいると、「えっ、これって日本でも同じことが起きてる」とたびたび思わされる。2022年、日本のジェンダーギャップ指数の順位は 146カ国中116位。日本のジェンダーギャップは一般的に、社会に出てからより強く感じられるという。「女のくせに」「女なんだから」のあとに続く言葉はたいてい私たちを否定するものだ。
この物語にはひどい現実がたくさん出てくる。でも彼女たちの選択は間違いなく日本の女子たちをも元気づけ、一歩踏み出すエネルギーをくれる。もう目をそらすことはできないだろう。
ただならぬ関係にある男女が交わすメール、匿名で意味深につづる・実名で暴露投稿をするTwitter、見知らぬ誰かと書き足していくトイレの小さな落書き。私たちの身近にある"書く"という行為をテーマにした短編10作を収録。
なぜ争いは起きる? 平和な世界のためにできることって? ロシア生まれ・日本育ちのYouTuber、アイドルのあるべき姿に悩んだアイドル、言葉と向き合い続ける作家……etc.、30歳以下の19人が寄稿したアンソロジー。
4歳の娘を育てる36歳のシングルファーザー・恭平は、同じように一人で1歳半の息子を育てている高校の同級生・章吾と再会する。お互いの利害が一致したことから、"二人の父・娘・息子"という4人暮らしを始めるが……。
2023年1・2月号掲載
選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/内山英理