目が離せない恋愛ミステリー。彼女は何のために失踪した?

辻村深月・著『傲慢と善良』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_1
『傲慢と善良』
辻村深月・著 ¥891 朝日文庫
すべての画像を見る

地味でまじめな『善良』そのものの婚約者、真実が突然姿を消した。容姿に恵まれ女性にモテてきた『傲慢』な架は彼女の故郷に向かい失踪の手がかりを探すが、そこで知ったのは彼女の意外な一面だった――。「恋愛とは何か」を読者に突きつける究極の恋愛小説。

 ひさびさに眠るのが惜しいくらい続きが気になって、夢中になって読み進めてしまった本。少しだけネタバラシしてしまうと殺人事件が起こったりはしません。そして普段は誰もが隠している人間の本質をズバズバと描いていくのだけど「一見いい人って実は怖い」というような安直な展開でもない。
 恋愛の場面において「この人はないわ〜」と人をジャッジするとき、私たちって頭の中で何をしているんでしょうか。真正面から考えてみると、すごく傲慢なことをしているのかもしれないですよね。恋愛したいのに「いい人がいない」「ピンとこない」が口癖の人にはぜひ読んでほしいです。そしてこの小説のもうひとつのテーマが『母親の支配』。もう大人なのについ親の顔色をうかがってしまう、親が押し付けてくる価値観から抜け出せない、という人にも強くおすすめします。明日から生き方が変わるかも……そんな本でした!

辻村深月・著『傲慢と善良』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_2
辻村深月・著『傲慢と善良』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_3
『掬えば手には』
瀬尾まいこ・著 ¥1595 講談社

何をしても平均点、個性がないと悩む大学生の梨木匠は、中学3年のある日"人の心が読める"という特殊能力に気づく。そんな彼が唯一心を読むことができない相手・バイト仲間の常盤さんには、切なく悲しい秘密があって……。

辻村深月・著『傲慢と善良』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_4
『北欧こじらせ日記 移住決定編』
週末北欧部chika・著 ¥1694 世界文化社

20歳の時に初めて訪れたフィンランドにひと目惚れした著者。人材会社に勤めながら「寿司職人としてフィンランドで働く! 」という夢を追い続ける日々を描く、本田仁美主演で実写ドラマ化された人気コミックエッセイの最新刊。

辻村深月・著『傲慢と善良』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_5
『僕たちは恋をしない』
岡田朔・icole・比村コズヱ・白妙スイ・朝月まゆ・綺森・著 ¥814 集英社文庫

親同士の不倫関係を解消させるため、高校生の二人は恋人のふりを始めるが――。紺野彩夏主演でアプリ『smash.』にて映像化予定の表題作をはじめ、第3回エブリスタ×ナツイチ小説大賞・恋愛短編部門の受賞6作品を収録。

2022年12月号掲載

選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/福森英理

オリジナルサイトで読む