写真集オタクが店主の店
さて、二店目は陽光溢れる井の頭公園のそばにある写真集専門店「book obscura」とその店主・黒﨑由衣さんを紹介しよう。藤井さんが妖怪だとしたら黒崎さんはオタクだ。そう、写真集オタクなのである。写真集専門店というとある種の敷居が高いイメージがあるが、黒崎さんの店にはそれがない。黒崎さんの写真集に対する愛がとにかく溢れていて「ただ好きだから紹介したい」という潔さが感じられるのだ。
「推し活をしているだけなんです」と黒崎さん。実際、店を訪ねると少しの会話から次から次へと写真集を勧めてくれる。例えば、筆者が「絵の勉強のためにトレースをしたくて」と話したところ、『PONTIAC』(Gerry Johansson)など4冊をすぐに紹介してくれた。キーワードは線。
「風景は立体なのに写真は平面。紹介したのは本来、立体であるはずのものが平面になったときに線としてどう見えるのかを見抜いている人たちの本です。絵を描くときにも線は大事なので」
丁寧に説明してくれた。オススメの理由を分かりやすく教えてくれるのも嬉しい。
それができるのは写真集を撮影のための参考資料としてではなく、写真集そのものとして好きだからだ。なぜその写真集がその判型でその紙でその印刷技法で、なぜその1枚の写真がその写真集に入っているのか。写真集をまるごと楽しむために写真家の一生や国の歴史、印刷業界やカメラの歴史まで見比べて調べるというから驚く。頭の中にある写真集のデータベースからお客さんに応じて一番良さそうなものを差し出してくれるのだ。もし写真について少しでも興味があるのなら、ぜひ訪ねてみてほしい。黒崎さんが写真の世界の深みにまで喜んで連れて行ってくれるだろう。
【book obscura】
住所:東京都三鷹市井の頭4-21-5 #103
営業時間:12:00〜19:00
定休日:火・水
https://bookobscura.com/