野菜作りをするようになり、対人関係のストレスが激減
何より変わったのが、人間関係における価値観だと言う。
「今まで周りと比べて自分もこうしなきゃと窮屈に考え、自分で自分を苦しめていた気がします。農園を始めて、自然のリズムに従って急に成長したりする植物たちのお世話に集中するうち、周りと比べるのではなく、自身の内側と深く対話している自分に気づきました」
つや農園のリピーターなど、自分達と相性がいい人が集まって来てくれる環境になったので、移住前と比べ、人間関係のストレスが激減したそうだ。
今後は、子どもたちに畑の楽しさを知ってもらう収穫体験を企画したり、農業の枠を超えていろいろなジャンルの企業やお店とコラボして地元を盛り上げていきたいと言う。
これから移住を考える人へのアドバイスももらった。
「希望する場所には四季を通して足を運ぶことをお勧めします。ここは春や秋は散歩するだけで清々しい気持ちになりますが、夏の猛暑や、冬の群馬特有の空っ風は想像以上にきつかったです。
見落としがちな水道光熱費の相場や自治体等の地域の年間の活動なども確認した方がいいですね。また、田舎の方は見ず知らずの人でも気さくに話しかけてくれるので、そうした会話が苦にならず近所付き合いを大切に出来るかどうかも、移住成功の目安になるかもしれません」
取材を終えた後、不眠や人混みに悩んでいた人とは思えない、おっとりしたサトミの明るい笑顔が記憶に清々しく残った。
見知らぬ土地、全く違う仕事でも、人は意外と早く馴染んで幸せになれるんだ。人間の柔軟性や適応力の豊かさを教えてくれたサトミとの、爽やかな出会いだった。
取材・文/中島早苗