食への興味から農業へ
引っ越してまず驚いたのは、光熱費の高さだった。12万円余りかかっていた家賃が不要になった代わりに、上下水道代の請求金額が今までの3倍になったのは想定外だった。
また、自治会の班長さんに「皆さんそうしているので、お隣だけでなく、行政区内のお宅(約300m範囲)に挨拶してくださいね」と言われ、10数軒、タオルを配りながら回った。今までのアパート暮らしでは上下左右の住戸への挨拶だけだったが、やはり田舎はそうしたご近所付き合いの習慣が続いているのを知った。
次の仕事に関しては、二人で「働きづめだった体をまずゆっくり休めて、それから探せばいいね」と話していた。
子どもの頃から体が疲れやすく、不眠に悩まされていたサトミは、その理由を知りたいと、自分なりに日々勉強をしていた。その中で、健康になるひとつの手段として、オーガニック野菜に興味が湧いた。
いろいろ調べるうち、一般の消費者からは見えない野菜の生産過程、根や土の部分などを自分の目で確かめたいと思い、移住して直ぐに家庭菜園を始めた。
もっと本格的に学んでみたい、家と一緒に引き継いだ祖母の畑も未来に繋げていきたい……サトミは、元々食に興味があったユウキと一緒に、「無肥料無農薬自然栽培」で少量多品目栽培を教えてくれる埼玉県の農家の研修を受けることに。
そこで二人は野菜の美味しさに魅了され、農業を始めようと決める。移住した2019年の夏から1年間、車で片道2時間かけて研修に通った。