「あの頃はファミコンを温めるのが生活のすべてでした」
――本体の厳選以外にも、何か研究をされていたんですか?
ピロ彦 本体温度がバグの結果に影響することが判明して、ファミコンを冷やしたり温めたりしましたね。
――ファミコンを……温める?
ばくぜろ 事の発端は私の引っ越しでした。新居に移っていつも通りにバグを起こしてみたところ、期待通りのデータが全く引き出せなくなっていたんです。
ピロ彦 最初のうちは、電気の周波数が変わったからじゃないか、変電所が違うせいじゃないかと疑っていました。
ひっしー 時系列は前後するのですが、周波数の違い自体は調べてみたんですよね。東日本と西日本で、電気の周波数が変わるじゃないですか。そこで、関東から大阪の友人に本体を送りつけて検証してもらったのですが、差異は見られなかったので関係はないみたいです。
――実際に調査したんですね!?
ひっしー 一応ですけどね。話を戻すと、実は私にも同時期に同じ現象が起きたんです。離れた場所にいる2人に同じ現象が発生した。共通する要因として考えられるのは、気温の変化ぐらいではないか。それで調べてみたら、案の定、ばくぜろさんの引越し前後で気温ががくっと下がっていたんです。
ひっしー 実際に部屋を密閉して当時の気温を再現してみると、同様のバグが起きました。
ピロ彦 検証の結果、電源のオン/オフバグでは、電源を消してつけるまでの時間とその時の温度が関係していることがわかったんです。それからは、どの時間、どの温度がバグの発生に必要なのか調査する日々でした。
ばくぜろ ピロ彦さんの本体は冷やしたほうが成功率が高いのですが、私の場合は逆でした。本体温度が低いとクリアに必須のアイテムがでないし、操作キャラも弱くなっちゃうのでクリア不可能になるっていうパターンが多かったんです。
――本体によって最適な温度が違うんですね
ひっしー 私の本体も温めタイプでした。そこで、電気毛布や膝掛けなどいろいろ試して、最終的にホットプレートを使う方法に落ち着きました。
ひっしー ただ、家庭用のホットプレートだと温度が高すぎるので、低温で動作するように改造して、そのうえで来る日も来る日も検証を重ねました。当時は生活のすべてが検証でしたね。仕事も、ホットプレートの電源をつけっぱなしにして出社して、昼休みに一旦帰って数値を調べて、また会社に戻ってのサイクルを毎日のように送っていました。今思い返しても、我ながらどうかしていたと思います。