一昔前なら、テレビドラマにおいては全話の世帯平均視聴率が二桁に乗ることがヒット作の目安になっており、一桁視聴率の作品はどんなに内容がよくても“不発”という扱いをされていたもの。

けれど現在放送中の恋愛ドラマ『silent』(フジテレビ系)は、第1話から第5話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)は6.4%、6.9%、7.1%、5.2%、7.9%と低水準で推移。以前なら「大爆死」「打ち切り危機」などと報じられてもおかしくない数字だが、『silent』は大ヒットと言っても過言ではない盛り上がり方をしている。

近年、『silent』に限らず、視聴率が一桁台でも高評価され、ヒット作となっているドラマが増えてきているが、どういった要因があるのだろうか。

TVerなどの見逃し配信で記録更新した『silent』、『最愛』

『silent』だけでなく、最近は『六本木クラス』(テレビ朝日系)、『最愛』(TBS系)といった全話視聴率の平均が一桁でフィニッシュした作品も、立派にヒット作として見られるようになっている。

かつては視聴率至上主義だったドラマ業界だが、近年は視聴率に依存せずともヒットする作品が続々と登場しているのだ。

まず視聴率至上主義が終焉した要因として、そもそもリアルタイムで観ている人をカウントする視聴率というデータが、時代にそぐわなくなってきていることが挙げられる。

自分の好きなタイミングで観られる動画配信サービスが全盛の今、決まった曜日・時間にテレビの前に縛られる不自由さを敬遠する人が増えてきているのも自明の理だ。

そんな視聴率だけが絶対正義ではなくなった理由と表裏一体で昨今注目されている指標が、TVerなどの見逃し配信サービスでの再生数である。

『silent』は放送1週間の見逃し配信(ビデオリサーチ調べ/TVer、FOD、GYAO!の合計値)において、いきなり第1話で531万再生を叩き出し、フジテレビ全番組における歴代最高を記録。続く第2話では567万再生とさらに記録を伸ばし、第4話では688万再生を突破し、フジテレビ歴代最高の記録を更新し続けている。

日本の総人口を約1億2000万人とすると、同じ人が何度も観ているというケースもあるだろうが、単純計算で日本の5~6%ほどの人が『silent』第4話を見逃し配信で観たという計算になるわけだ。