『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017)The Square 上映時間:2時間31分/スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク

グロテスクなのに美しく、クレイジーなのに感動的! 奇妙奇天烈なカルト映画5選_3
Everett Collection/アフロ

前述の2作品と比べると、リューベン・オストルンド監督による『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、一見、フツーの作品のように見える。

なぜなら、主人公は美術館のキュレーターという、イケてる職業に就いているおしゃれな男(クレス・バング)で、描かれるのは、次の展覧会の目玉の参加型アート「ザ・スクエア」を巡る、美術界の裏側の人間関係だから。

だが、監督の前作『フレンチアルプスで起きたこと』(2014)でも予測不能でスリリングなストーリー展開に驚かされたように、本作もまた、見ているうちにどんどん不協和音が拡大していき、物語はあらぬ方向へといざなわれていく。

特に、着席ディナー形式のレセプションで登場する“猿パフォーマー”オレグのシーンは衝撃的。オレグは、敵を威嚇するように息を荒らげて参加者を挑発するが、それがハプニング・アート的なパフォーミングなのか、それとも、場違いな侵入者(イントルーダー)による危険で一触即発の事態なのか。会場にいる人たちと同様、観客も判断がつかず、異様な緊張感を強いられる。

ちなみに、オレグを演じたテリー・ノタリーはシルク・ドゥ・ソレイユ出身のアメリカ俳優で、『猿の惑星』シリーズの猿役のモーション・キャプチャーを務めた人物。監督は「猿の演技をする俳優」と検索し、ノタリーに白羽の矢を立てたのだという。

第70回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた、異色の物語だ。