「そんなに普通に合わせる必要がある?」
性別による押しつけがなく、自由に、得意なほうを得意な人がやる。それがあたりまえの世界。いったんは、そういった性別による先入観のない環境で育っていても、学校へ通い始めると異性愛者がメインとなるマジョリティのコミュニティに身を置く時間が多くなっていく。
そこでつくられた社会規範を目の当たりにして疑問を抱き、「なぜうちはママが2人なの?」「なぜうちにパパはいないの?」と言ってくるかもしれない。それは子供を養育している同性カップルが想定している未来だろう。
茂田「絶対にそういうことは言うだろうし、子供が思春期になったら、『産んでないくせに』、『血がつながってないくせに』とか私は言われると思う」
長村「それでわくわくしている(笑)」
楽観的というか、どこか何があっても楽しんでしまおうと前向きな雰囲気を感じた。そして茂田さんは真剣な面持ちで話す。
茂田「どこかのタイミングでちゃんと話したいとは思っています。一般的には男女に見える人たちが家族を営んでいるところが多いですけど、多い少ないといった数の問題ではないと思っています。たしかに私たちは家族構造からしたらマイノリティ。でも、ひとり親のところもあるし、祖父母に育てられている人もいるし、『みんな違うんだよ』といった話はする。私たちはマイノリティとして生きてきて、家族として大事なのは形ではないなと思っているので」
長村「バカにされたり、非難されたり、貶められたりする発言は他者からの圧ですよね。その他者からの圧が本当に正しいのかという話を成長過程のどこかでしなければと思っています。私たち家族に父親はいないけれど、そんなに他の人の普通に合わせる必要がある? というのが最終的に行き着くところかなと思っています」