アイドルという物語の終着点としての武道館

武道館はアイドルにとって憧れの場所であると同時に、ファンが自分のことだけを見てくれる最高のライブ会場であることがわかった。

しかし、アイドルが武道館に到達するまでは並々ならぬ努力、才能、運が必要ではないだろうか。

「おっしゃるとおりです! 10年ほど前からアイドル戦国時代と呼ばれるようになり、地下アイドル、ローカルアイドルなどアイドルの方向性の変化、母数の増加が顕著になりましたが、武道館でライブをできるアイドルは一握り。

メジャーデビューできないアイドルもいるわけですから、大多数のアイドルにとって武道館は夢のまた夢です。よく巷で言われている『アイドルの活動限界年齢は25歳まで』という話にもあるように、武道館ライブまでの道のりは本当に過酷なものだと一アイドルファンとして実感しています」

だからこそ推しのアイドルが武道館でライブをできた暁には、感極まってしまうのだとか。

「アイドルの歩んだ軌跡って物語としてファンに受け止められやすいんです。どんな歌を歌って、どこでライブをして、どんな挫折をして、それを乗り越えて……というように推しの活動一つひとつを見ていくことによって、ファンは彼女たちへの理解と思い入れを深めていきます。

特に今のアイドルはグループ活動が主流。事務所がある程度の方針は決めるものの、基本的にはアイドル一人ひとりに主導権を持たせて活動させています。ここが70~80年代の厳格なコンセプトや演出のもとに作られたアイドルとの大きな違いでしょう。

ひとつのグループのなかで競い合って、お互いを高め合っていくアイドルたちの過程に我々(ファン)はカタルシスを感じるわけです。

そして、その物語の終着点となるのがまさに武道館。ちなみに私の推しである元ハロプロ所属の稲場愛香さんも今年の5月30日に武道館で卒業コンサートを行い、ハロプロを巣立っていきました……。

ハロプロは武道館を卒業の場所として認識しておりまして、何人もの先輩アイドルが卒業コンサートを行ってきました。アイドルの聖地・武道館で卒業できるのは本当に名誉なことですから、多くのアイドルにとっては理想の終わり方とされています。アイドルに武道館はこのうえなくふさわしい舞台と言えるでしょう」

山口百恵とビートルズが転機。「日本武道館」が“アイドルの聖地”になった理由_03

――ポップカルチャー時代のはじまりを告げ、山口百恵によって伝説と化した日本武道館。アイドルにとって武道館とは“憧れ”の場所であり、そこでライブをすることはアイドルという偶像が“神格化”することを意味するのかもしれない。武道館はこれからもアイドルたちの目標であり続けるだろう。