スタントパフォーマーという栄光なき強者たち
――スプラッター系のバイオレンスホラーが好きな人にとってはまさに王道といえる爽快感のある映画だと思いました。アクションをするにあたって、作品ジャンルによる違いはあるのでしょうか?
ホラー作品の方が、スタントを思い切ってやれる印象はあります。日常生活の中でアクションをするときは「なんでアクションするのか」「なんでこの人は強いのか」と、キャラクターに対する疑問がときどき生まれるんです。でも、ホラーは、怪奇現象や超常現象という得体の知れなさがひとつあるので、逆にアクションに対する動機付けを取り払った状態でスタントそのものに思いっきり集中できるイメージがありますね。
――主演を務めた映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)もそうでしたが、最近は女性がアクションをする映画が増えている印象です。その流れをどう見ていますか?
すごく増えていると思いますし、「もっと増えてほしい!」と思いますね。本作のプロデューサーである千葉(善紀)さんは、昔から女性がアクションをする映画をたくさん作ってこられた方なので、もっともっと女性に戦わせてほしいです。
――やはり、アクション業界に女性は少ないですか。
比率で言ったら男性が9に女性が1くらいですね。でも、女性の方が練習してますよ。
例えば、多人数戦のアクションをやる時、中心になる人物の「芯(シン)」とやられ役の「絡み」に分かれるのですが、女性が「絡み」要員で呼ばれることは稀で、男性の方が現場に多く呼ばれています。女性は「芯」の限られた枠に入るために、まず自分の存在を知ってもらわないといけない。
だから自分ができることを増やすために常に練習している感じです。
私も仕事がない時は、スタント仲間を集めてずっと練習してますね。3時間から5時間ぐらいミット打ちをしたり(笑)。ただ、同じように練習を積み重ねていても、スタントパフォーマーはアスリートではないと思っていて、あくまで作品の一部。現場で休憩の時にたばこを吸う人も多いですし、本当に職人の仕事だなって思いますね(笑)