物語を作って演じてもらう
――ありきたりなポーズにしないコツはありますか?
指示ができるように、フォトグラファーは自分の中にポーズのストックがあります。ダサめのポージングはキャッチーですし、かわいいので、昔のアイドルの写真や雑誌をチェックしたりするのもおすすめですね。
――でも、子どもや写真が苦手な人にポーズを取ってもらうのは難しいです。
物語を作って演じてもらうと面白いものになります。「あそこに鳥が飛んでるよー!」「あ、上から丸が降ってくる! どうしよう!」「今度は地面に大きな穴が開いてる!」「危ない! 壁に挟まれる!」とか。想像して動いてもらうんです。シュールなポーズで意外とおしゃれな写真になったりもします。また、歩いている途中で止まるとか、何かの動作の途中も面白いですね。
――全然言うことを聞いてくれない子どもにはどう対応しますか?
レンズに乗せたぬいぐるみを何度も落っことす、というのはカメラに注目してもらう定番の技です。スリッパが脱げちゃうとか、小道具の風船が飛んでいっちゃうとか、たとえ最初は見てもらえなくてもしつこく何回も繰り返す。繰り返せばいつか必ずウケます! これは僕の父親が営んでいた写真館の50年の歴史で培われた技です(笑)。
それと、一緒に写る人がいる場合はシートベルトのように後ろから子どもを抱えてもらう。腕の中で動いている分には何とか撮れますし、それはそれで面白い絵になったりもしますので。
緊張と緩和を利用する
――子どもも大人も、うまく笑ってくれないというのもよくありますが。
笑って、というと笑わないですよね。「緊張してますね」というと自然な笑顔が出やすいです。でも一番大事なのは撮影者が笑うことですね。それと、写真を撮り終わって、「OK」と言ったあとのホッとした表情も必ず撮ってみてください。写真を撮っている間の緊張と、それが終わった緩和。2枚並べれば素敵な組み写真になりますよ。
――乳幼児の場合は?
小さい子どもは、発達段階によって何が面白いのかが変わりますよね。今は「距離感」が面白いんだなとか。それを見つけてやってあげれば、その時間を切り取ることにもなりますし、いい写真になります。きっとご家族なら簡単ですね。
――屋外では日差しが強くて苦労する場合も多いと思います。
日中は顔に強い影ができてしまいますね。基本的に、影の中にいたほうがきれいに写ります。顔は日傘の影や木陰に入れて撮るのが無難かもしれません。木漏れ日を活かすときれいに写りやすくて便利ですが、顔の中で高さのある鼻だけ白くなったりしてしまうことも多いので、半歩下がってもらって様子を見るのがおすすめです。
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秋の行楽シーズンに、ぜひ“未来の自分を笑わせる”つもりで撮影してみてほしい。
あかるい写真館
住所:東京都千代田区神田錦町3-9 神田ポートビル1F
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取材・文・撮影/宿無の翁
写真提供/あかるい写真館