自然な演技は難しいので、あえて不自然を演出する
――「未来の自分を笑わせる」というのは大事なキーワードな気がしますね。
被写体がその気になるのは大事です。撮影者と被写体の関係性の中で、撮る時間そのものを楽しんで、たくさんシャッターを切る。せっかくデジタルの時代ですから、何百枚でも撮ってみましょう!
――テーマも決めるんですね。
テーマがあれば、写真に写るのが苦手な人も「何をすればいいか」がわかって撮られやすくなります。
何の記念なのか、無理にでも決めてみるとかね。なんで今写真を撮るのかちょっと考えてみると出てきますよ。
――なるほど。写真に写るのが苦手、写真が嫌い、という人は少なくありませんよね。
「あかるい写真館」のお客さまでも、撮られるのが苦手な家族の写真がないから改めて撮りに来るという人は多いですね。写真が苦手な様子そのものを活かしても面白いですよ。
――私も撮られるのは苦手ですが、「未来の自分を笑わせる」やテーマがあると少し写りやすくなる気がします。
写真は届いて初めて価値になるものだと思います。この大事な時間を切り取って、誰に残したいのか。それは未来の自分自身でもいいし、未来の子どもたちでもいいんですが、届け先をイメージして、何を知らせたいのか考えてみるといいと思います。それに、どなたでも皆さんお芝居はできるんですよ。
――誰でも演技はできる?
そうです。小さな子どもでも嘘はつきますし。自然な演技というのは難しいので、あえて不自然を演出してオーバーな感じにしてあげると逆に自然になったりします。スタジオの場合は小物やセットでそれを作るわけですが、日常なら目にしているもののモノマネをするとか、あえて変なことをしてみるといいですね。動物園なら動物のモノマネをするとか。
――遊びながら撮るようなイメージなのでしょうか?
何よりも撮っているその場を楽しんで! その中に気づきがあって、それを撮ると面白い写真になるんですよ。あと、撮ったものは被写体と見せ合います。こう写るんだな、という気づきを共有することは大事です。
――気づきですか?
わかりやすい例として、美術家の田中偉一郎さんの作品「ストリートデストロイヤー」をご紹介します。道のひび割れなどを、自分の攻撃で破壊したかのように見立てるものです。こういうふうに、日常の中に自分が関係を持てるポイントを見つけて、関わっていくと面白いですよね。さっき言った動物のモノマネなんかもそうです。あとは、普通はひとつしかないものを増やしてみるとか。
――風景と関係性を持つみたいな。
好きなものもそうでしたが、関係性は大事なんですよ。被写体と撮影者の関係もそう。こっちが笑えば被写体も笑いますし。写真がマンネリだなと思ったら、子どもに撮ってもらうとか、被写体と入れ替わっちゃうのもいいですよ。