『ライオンのおやつ』(小川糸/ポプラ社)
大ベストセラー『食堂かたつむり』でデビューした小川糸の『ライオンのおやつ』。若くして余命宣告された雫は、瀬戸内海の島にあるホスピスで最後の日々を過ごすことを選ぶ。ホスピスには、毎週日曜日、入居者が思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった。
田村 ページをめくりながら何度も泣いてしまいました。切ないストーリーではありますが、生きていることのありがたさや喜びも感じる作品。温かくもあり、切なくもあり……泣きました。いつ人生が終わってしまうかわからない中で、自分はどう生きていくべきなのか、考え直すきっかけになるかもしれません。
『凍りのくじら』(辻村深月/講談社ノベルス)
2012年、『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞した辻村深月の『凍りのくじら』。藤子・F・不二雄の作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子の前に、「写真を撮らせてほしい」という青年が現れて……。
田村 書店のポップを見て面白そうだなと思って手に取った作品です。辻村深月さんの『ドラえもん』愛が溢れています。ドラえもんの名言やエピソードがたくさん盛り込まれて、ドラえもんを読み返したくなってしまうかもしれません(笑)。ハートフル小説の括りに入れていいのかわからないですが、作品ににじみ出るドラえもんへの思いが、不思議と読む人を優しい気持ちにしてくれます。
文/渡辺鍋子 サムネイルデザイン/鈴木沙季