『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾/角川文庫)
前編のミステリー5選でも2冊が挙がった東野圭吾作品から『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。手紙を出すと、店主が人生相談に乗ってくれる「ナミヤ雑貨店」。さまざまな悩みを抱えた人からの手紙が届く店で、時空を超えた奇蹟が起こる。
田村 素敵な言葉がたくさん詰まった、大好きな作品です。おすすめのハートフル小説を聞かれたら、まずこの作品を挙げます。心温まるだけでなく、人生について考えさせられるような場面もあって、読み終えたときに本当にいい本だな、と感じました。ストーリー展開も絶妙で、ちょっと意外な結末に驚かされるはずです。
『木曜日にはココアを』(青山美智子/宝島社文庫)
青山美智子のデビュー作『木曜日にはココアを』。喫茶店で頼んだ一杯のココアに始まり、人々の何気ない日々の出来事がゆるやかに繋がっていく。東京とシドニーを舞台に描く12編の連作短編集だ。
田村 これは最近読んだ本です。人と人とが思いがけず繋がっていき、最後には一つの大きな円ができるような物語です。人っていいなって。描かれた全てが優しく温かくて、読んでいると自然と頬が緩みます。ちょっと落ち込んでいるとき、ほっこりした気持ちになりたいときに、ぜひ読んでほしいです。
『西の魔女が死んだ』(梨木香歩/新潮文庫)
『西の魔女が死んだ』は梨木香歩のデビュー作で、日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞などを受賞。中学校進学後、学校に行くのが苦痛になってしまった少女・まいが、「西の魔女」と呼ばれる田舎の祖母のもとで「魔女修行」を行うことになる。
田村 西の魔女こと、おばあちゃんの教えは、主人公のまいだけでなく私たちにとってもためになるものばかりだと思いました。わりと波がなくずっと温かく展開していく作品で、田舎へ行きたくなりました(笑)。忙しい日々を過ごす中で忘れかけていたことを思い出させてくれるような一冊です。映画化もされましたが、映像がとてもきれいで何度も観ています。