ライフセーバーを目指したきっかけの事故

「死に直面する可能性がある仕事は、もちろん怖い」水難事故0に挑み続ける、ライフセーバーたちの覚悟_3

名前の通り、命を守る仕事に従事するライフセーバーだが、恐怖心はないのか尋ねると、「怖いです。怖くない人はいないと思う」と即答する。

解放的な雰囲気に包まれる海水浴客とは違い、彼らは常に、緊張感と隣り合わせだ。

大学からライフセービングを始めた西山さんの場合、大学3年生のときに出場した大会での事故が、本格的にライフセーバーを目指したいと思ったきっかけだった。

「初めて水難事故に遭遇したのが、2010年の全豪選手権でした。当日はサイクロンが直撃してものすごく海が荒れていて、出場していたオーストラリア人選手のひとりが競技から戻っていないことがわかったんです。

警察や消防も駆けつけて捜索を開始しましたが、しびれを切らした何百人ものオーストラリア人選手たちは、身体ひとつで海に入っていきました。僕自身は怖くて海に入ることができませんでしたが、危険を顧みずに飛び込んでいったオーストラリア人ライフセーバーたちの姿には震えました。残念ながらその選手は亡くなってしまいましたが、仲間を助けようと救助に向かった彼らの精神はめちゃめちゃかっこいいと思ったし、僕もそこを目指したいと思ったんです」(西山)

「死に直面する可能性がある仕事は、もちろん怖い」水難事故0に挑み続ける、ライフセーバーたちの覚悟_4

もちろん、いくら彼らが高い意識を持って活動していても、残念ながら水難事故が起きてしまうこともある。

「助けられたこともありますが、助けられなかった経験もある。すごく悲しいし、辛いし、やっぱり責任を感じます。死というものに対して、僕たちはすごく距離が近いと思います。だからこそ、危険性をたくさんの人に認識してもらえるように活動したいし、事故が起こらないように、がんばらなければいけないと思っています」(上野)